願う気すら起きない ページ48
今日も私は一人で煙草を吸う。
煙草は別に好きじゃない、むしろ嫌いな部類だ。
それでも吸う理由なんて、ただ体を痛めつけてさっさと死んでしまいたいからだった。
プカプカと輪っかの煙を出す。
これができるようになったのは昨年のことで、知っているものは誰一人としていない。
「…で……」
「へ………え…かぁ」
ひそひそと人の会話が近づいてくることに気づく。
すぐさま火を消して簡単に身だしなみを整え、喫煙所から出ていかなければ。
曇りガラスで作られた扉を開いてさっさとここから離れようとする。
が、それは近づいてきた女子によってできなかった。
「あ、先輩!こんにちは、お久しぶりです!!」
「あぁ……久しぶり、西原」
ふわりと花のように笑う彼女、西原智美は私の後輩だ。
とても可愛らしく、仕事は早いとは言えないが丁寧でやり直しは少ないし礼儀正しい。
栗色のウェーブがかかった髪は愛らしさを倍増させ、男だけではなく犬っぽさから女からもなかなか人気のある凄い子でもある。
「先輩、煙草吸われるんですね。イメージと合ってかっこいいです!」
「いやいや、そこまで吸わないよ」
手を軽く横に振り否定するも、西原は「クールな先輩、格好いい……!」と拳を握るだけで聞いちゃいない。
人の話は聞きなさいと言っただろ、西原。
「えっと…」
横にいた隣の若い男性が困ったように私達を見る。
人に説明をしなさいとも教えただろ、西原。
「あ、ごめんね!この人は神田A先輩っていって、私の教育をしてくれた人だよ。今は違う部署だけど……前は今の私達とおんなじ部署だったんだ」
「どうも、元西原の教育係こと神田Aです」
「はじめまして、紫村和です」
ペコリとお互いに会釈をする。
茶髪の髪は西原より濃く、フサフサと触り心地が良さそうだ。
「ふふーん、神田先輩は凄いんだよ?なんたってうちの会社のエースの一人なんだから!」
「過大評価」
首の後ろを掻きながら、相変わらず無駄にでかい評価をしてくる後輩の頭を軽く叩く。
「あいてっ」
「……じゃ、私は続きの仕事あるから」
これ以上いたら絶対に私の話か相手の話をして時間を食うだけだと判断し、後ろを向いて自分の部署へと戻る。
また今度ご飯食べに行きましょーねー!と西原が叫ぶのを振り返らずに片手を振って答える。
そのまま部署に戻り、仕事をして時は過ぎる。
朝に早く出勤したおかげで量は少なく、今日も定時で帰ってやると意気込み仕事に取り掛かった。
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百瀬のえる(プロフ) - 25歳shpおじさんとjkちゃん狂おしいほど好きです先生生徒好きは実はここ発祥ですjkとshpの組合せンァ゛゛゛゛ (2020年10月8日 1時) (レス) id: 90299a5c54 (このIDを非表示/違反報告)
夜有(プロフ) - えなさん» ありがとうございます!そう褒めてくださるととても嬉しいです…!まだ続編は決めてませんが、そのときはまた見ていってくれると嬉しいです(*´ω`*) (2019年3月8日 10時) (レス) id: 93b15b9a53 (このIDを非表示/違反報告)
えな(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。貴方様の綴る物語が大好きで、短編の中にも夢主ちゃんの想いや情景が繊細に書かれていて読みながらとても心を動かされています。別作品もあってお忙しいとは思いますが、次回作があるのであれば心からお待ちしております…! (2019年3月8日 3時) (レス) id: 4d21cb4889 (このIDを非表示/違反報告)
夜有(プロフ) - 柚さん» ありがとうございます!カクテルは自分の中でも一番良作だと思っているのでとても嬉しいです。期待に添えるよう、頑張っていきますね! (2019年3月3日 2時) (レス) id: 93b15b9a53 (このIDを非表示/違反報告)
柚(プロフ) - 素敵です…特にカクテルの話が好きで何回も読み返してしまいます。これからも頑張ってください!! (2019年3月3日 0時) (レス) id: db3c90213f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜有 | 作成日時:2019年2月19日 14時