嘘ではなく確かに愛していたのです ページ26
「ここまでしか送れなくてすみません」
『ええんよ、色々ありがとう』
申し訳なさそうな彼から鍵を受け取る。後ろには森。ここをずっとまっすぐ行けば彼だけが知っている小屋があるらしい。
『ほんまに旅行楽しかったで、ありがとな』
「こちらこそありがとうございました」
彼の色素の薄い目が優しく細められる。こうやって話すことももうないだろうからその瞬間を目に焼きつける。
ここを去れば全てが終わりだ。もう彼らに会うことは無いだろうし、会うとしたらそれは私が処刑される時ぐらいだろう。
最後は笑ってお別れしたいから口角を上げて目を細めて笑顔を作る。彼の手をそっと包み込むように握ると彼と視線があい二人の間に一瞬静寂が訪れる。
さよなら、そのなんてことない4文字を言うのがこんなに苦しいと思える日が来るとは思っても見なかった。今までの私の全てに別れを告げるためのたった4字。またね、はもうない本当の終わり。苦しくても、辛くても、泣いてしまいそうでもそれでも私は言わなければならない。だってそうしなければ私は大好きな彼らを自らの手で苦しめてしまうから。
息を吸い込む。
ゆっくりと口を開き音にする。
『さよなら』
『どうかあなた達の人生に幸多からんことを』
彼の手を離し1歩下がる。俯いてしまった彼の顔はよくは見えなかったがくしゃりと歪められているように感じた。あぁ、どうかそんな顔をしないで。しかし私にはそれをどうにかしてあげられる術はない。
昔なら手を伸ばせたのかな。あの頃とは違う私たちの距離から目を背けたくて私はくるりと後ろを向きその場をあとにした。
───
走って走ってやっと見えてきた小屋の鍵を急いで開けて中に駆け込む。
床にべたりと座り込みぼろぼろと涙を零す。たった一人しかいない空間に泣き声だけが響く。もう慰めてくれるあの人達はいない。その事実がさらに私の胸をえぐり痛みを与える。
ねぇグルちゃん。あなたがあの言葉を言った時どんな気持ちやったの？
私自身がつくりあげた夢の中の彼に問うてもなんの意味もないのはわかっている。それでも聞いてみたくなった。あなたもこんなに胸が痛んだ？それともただ相手のこれからを願う気持ちだけだった？わからない、わからない。
ドロドロでぐちゃぐちゃ。そんな醜い心をどうすることも出来ずにベットに倒れ込む。溢れる涙を止めるすべが私にはわからない。
だっていつだって誰かが側にいてくれたんやもの。
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もふもふ - 初コメします。今泣きながら読んでます。神作品を産んでくれてありがとうございます。 (2022年11月24日 18時) (
レス) @page12 id: a41408c385 (このIDを非表示/違反報告)
うさ - 水月華さん» すみません。そうだったんですね…。勝手なことをしてすみません。ですが私の端末ではコメを消せないので作者様が消してもらえるといいです。 (2019年11月6日 22時) (レス) id: 95908891b8 (このIDを非表示/違反報告)
水月華(プロフ) - 当作品の中にパスワードについて記載しておりますのでそちらをご確認ください。申し訳ないのですが読みたいと思っている方だけに読んで頂きたいと思っておりますのでそうでない人の目にもとまりやすいコメント欄でパスワードを書くのはやめてください。 (2019年11月6日 8時) (レス) id: fac1d7eb45 (このIDを非表示/違反報告)
うさ - パスワードは1029です。本人様ではなくすみません。ストーリーの中で見つけられず、コメ欄に来た方々にこのコメを見ていただけるとありがたいです。 (2019年11月4日 15時) (レス) id: 95908891b8 (このIDを非表示/違反報告)
案山子 - 凄く面白い作品でした！是非続編が見たいので、パスワードを教えてもらってよろしいでしょうか？ (2019年11月4日 1時) (レス) id: 51ee2da9ff (このIDを非表示/違反報告)
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