忘れて ページ18
彼が懐かしむように聞かせてくれた話はもう随分と前のことで。言い出したはずの私が忘れていたような約束。よく覚えていたなぁと少し感心するも、だからなんなのだろう？という気持ちになる。
ニコニコしている彼は突然私の手を包み込むように握って少し興奮したように
「Aさん！約束どうり旅行に行きましょう！」
『ん"ん！？』
「もう準備はしてあるんですよ！」
状況が上手く読み込めない。
『…えっ、あの仕事があるんじゃないん？』
「最近長期の任務がありましたから、それの休暇でなんと！１週間もお休みなんですよ！」
『は、はぇー、そうなん』
「お互い時間はありますし、いいじゃないですか、しましょうよ旅行！」
いつもの落ち着いた彼とはうって変わって嬉嬉として語る姿を見て昔に戻ったみたいでなんだか嬉しくて、でもどこか胸が痛んで。
『……やっぱり私』
「夜が空けるまでにはこの国を出た方がええ。朝になったら事態に気づいて検問がはられるはずや。国内に留まるよりは多少は見つかる確率が下がる。」
「それに行くあてもないんでしょう。この国と隣国の間の森の中に私が所有してる小屋があるんです。あそこの存在はグルッペンさんすら知りませんから。そこで過ごせばよほどのことがない限り見つからないでしょう。」
「だから行きましょうよ」
ねっ？なんて可愛らしく小首を傾げられたら断りずらくてちょっとせこいなぁ、なんて思うがそれでも彼が指摘したとおりあまりこの場で悠長にすべきではない。
それに恐らく彼はバイクを移動手段に使用するはずだから夜が空けるまでにはここを抜けられる。その後のことも手配されているとあればここはついて行くのが得策であろう。もしも何かあれば逃げればいいのだから。
『わかった。旅行、行こうや』
「そう言ってくださると思ってました」
『ただ、幹部と通信できるものは全て置いていって』
一応彼の耳にはピアス型のインカムはついていないことはチェックしているが隠し持っていたならば私にはわからない。
「それはもちろん。なんならチェックして頂いても大丈夫ですよ」
『……いや、信じるわ』
色素の薄い目は真っ直ぐにこちらを見つめている。そもそも幹部同士で連絡を取れるような媒体はほぼないのだ。だから彼を信じよう。
「では行きましょうか」
『うん』
彼から手渡されたヘルメットをつけバイクに跨り彼にしがみついた。
ふわりと香るタバコの匂いにまた胸がいたんだ。
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もふもふ - 初コメします。今泣きながら読んでます。神作品を産んでくれてありがとうございます。 (2022年11月24日 18時) (
レス) @page12 id: a41408c385 (このIDを非表示/違反報告)
うさ - 水月華さん» すみません。そうだったんですね…。勝手なことをしてすみません。ですが私の端末ではコメを消せないので作者様が消してもらえるといいです。 (2019年11月6日 22時) (レス) id: 95908891b8 (このIDを非表示/違反報告)
水月華(プロフ) - 当作品の中にパスワードについて記載しておりますのでそちらをご確認ください。申し訳ないのですが読みたいと思っている方だけに読んで頂きたいと思っておりますのでそうでない人の目にもとまりやすいコメント欄でパスワードを書くのはやめてください。 (2019年11月6日 8時) (レス) id: fac1d7eb45 (このIDを非表示/違反報告)
うさ - パスワードは1029です。本人様ではなくすみません。ストーリーの中で見つけられず、コメ欄に来た方々にこのコメを見ていただけるとありがたいです。 (2019年11月4日 15時) (レス) id: 95908891b8 (このIDを非表示/違反報告)
案山子 - 凄く面白い作品でした！是非続編が見たいので、パスワードを教えてもらってよろしいでしょうか？ (2019年11月4日 1時) (レス) id: 51ee2da9ff (このIDを非表示/違反報告)
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