【wrwrd】家出します探さないでください【all】

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言ってしまった。どうしよう、違うのちがうの。大嫌いなんて思ってないの。私が言ってしまったのに酷く動揺してしまって。



3人の目線から逃れるように、手が切れることも気にせず急いで破片を拾いその場をあとにする。



なんだか泣いてしまいそうで私は自室へと駆け出した。自分で言ったくせに1番自分が傷ついてる。馬鹿みたいだ。






────




長い廊下を駆ける。その最中で破片をひとつ落としてしまった。慌てて拾い上げると、そこは総統室の扉の前で。



手元の壊れた懐中時計を見つめる。グルッペンさんがくれた大切なもの。ぐるぐると考え込んでしまってさらに気分が落ちる。



あぁ、泣いてしまいそう。薄い水の膜が決壊してしまう前にここを立ち去らねば、そう思い立ち上がり前に進もうとしたその時






「グルさん、俺たちにはもう時間が無い、どないするんや」
「そうだな。…早くあいつをここから」





総統室から聞こえる会話の最後の言葉を聞く前に私はその場から逃げ出した。



名指しではないものの2人の話題の中のアイツとはつまり私のことだとすぐに分かった。そしてグルッペンさんがあの後口にするであろう言葉は"追い出さねば”だろう。



あくまで憶測だがきっとそれに似た言葉を言うはずだ。私はそれが耐えられなくて苦しくて怖くて逃げ出すしか無かったのだ。




───



やっと着いた自室で1人、さっきの言葉が何回も繰り返される。



皆に無能と蔑まれようともまだ幹部でおらしてくれるのは何かしら私に思うことがあるからだと思ってた。でもそれも見当違いだったようで。やっぱり私、どうしようもない無能やわ。なんにも気づけてなかった。



今まで作り上げてきたものがガラガラと崩れていく。そんな気がして立っていられなくなった私はその場にうずくまった。






「これから幹部として俺たちと同じ時を刻んでくれないか？」
『…うん！』






この国ができてまだまもない頃そう言われて渡されたこの懐中時計がとても嬉しかった。確かに嬉しかったはずなのに、隣にいることを互いに望んだはずなのに。もう私の隣には誰もいやしない。







『……うそつき………』







誰に届く訳でもない言葉を吐き出して私は1人大粒の涙を零した。

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