114 ページ14
「遅くなってすまねえ」
すぐに抱きしめられて、鋭児郎の匂いに包まれる。
それだけで、少し軽くなった気がした。
「みんなは、A組の」
「今自分のことだけ心配してろ」
「なんで、鋭児郎平気なの」
「Aのことが大好きだから。」
止まりかけた涙が溢れて、一瞬焦るけど、
さっきまでの涙とは違うことくらいわかった。
「私、やっぱり何も出来なかった。みんなに迷惑かけた。」
「かけてねえよ。」
「もう、こんな個性要らない…、誰かを傷つけるのはもう嫌、傷つけられるのも、1人になるのももう嫌だ…！」
ぐっちゃぐちゃの声に1つずつ頷いて、
何も考えられなくなるくらい強く抱き締めてくれた。
「俺が1人になんかさせねえし、誰にも傷つけさせない。それに、Aの個性は凄えし、誰よりも優しい個性だろ。要らないなんて言って、1番苦しいのはAだからそんなこと言うな。」
少しずつ、少しずつ昇華されていく。
誰のものだったのかも分からない感情たちが、
鋭児郎の言葉で体温で、溶けていく。
「どこかに捨てたいって思っただろ。」
「うん」
「今から行く。」
何か言う前に抱えられて、裏口から出た。
何も知らされないまま着いた雄英の敷地。
「その個性がいつまで保つとか分からねえけど、ここになら捨てていいって。」
捨てればいい、投げればいいもずっと言われてきたこと
要らないから貰った感情は当然私にも必要ない。
こうして自滅して、迷惑をかけるだけなんだから。
それなのに、どうして捨てるのが怖いんだろう。
誰かの恐怖や悲しみを、捨ててしまうのが怖い。
この感情たちの行先はどうなるんだろう。
「俺に移してもいいぞ」
「…え？」
「効かないみたいだし。捨てるのが怖いなら俺が全部引き受ける」
「そんなことしないよ」
「俺は、誰かのことを救けたAが苦しんでるのが嫌なんだ。自分のためじゃなくて、俺のために捨ててくれないか。ここなら誰も来ない。大丈夫だから。」
指先から白い玉がこぼれ落ちる。
ぽろぽろこぼれた玉は勢いを増して
私たちの周りだけ真っ白になった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 311人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なつとん(プロフ) - ♡さん» ありがとうございます…！！三角関係?もすれ違いもまともに書けたことないんですけど、ちびちび頑張っていきます、コメントめちゃくちゃ活力ですありがとうございます！！ (2023年1月30日 8時) (
レス) id: d157acdb5e (このIDを非表示/違反報告)
♡ - 瀬呂ｰｰｰｰｰｰｰ！！！The･メインキャラではないのに人気ありすぎの瀬呂の恋にすごくきゅんきゅんしてる。。 (2023年1月30日 2時) (レス) @page3 id: efa07b04ac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なつとん | 作成日時：2023年1月29日 23時
