好みと隠し事 ページ4
「あれ、今日Aさんおるんや」
よろしくお願いします〜ぺこりと頭を下げる濱家さんにドキリとしながらも軽く挨拶を返す。
彼がいる現場はいつも楽しみで、昨日は寝るのが遅くなってしまった。
(なんて、眠れないのはいつもか)
ははっと心の中で自嘲しながら今日の収録の準備を始めた。
「お疲れ様でした〜」
今回もまた無事に終わり楽屋へと向かう芸人さんたちに挨拶をしていく。最後にかまいたちの二人が私の前を通り過ぎた。
「お疲れ様です〜」
私が声をかけると
「今回もありがとうございました」
と山内さんが軽く礼をしてくれる。やっぱりいい人だなぁ、なんて考えながら私も会釈すると
「Aさんお疲れ様です〜」
濱家さんも続けて声をかけてくれた。
「濱家さんもお疲れ様です」
先程と同じように軽く礼をすると
「あのこれ、よかったら」
と濱家さんからアメを手渡される。
「え、私にですか?」
びっくりして思わず聞き返すと
「そうです。なんや今日は疲れてそうやったんで、」
と照れているのか目を逸らしながらも彼は気遣いの言葉をくれる。
「あ、ありがとうございます」
厚意ならば素直に受け取ろうと彼のもとへ手を伸ばすとひょいっと手を上に引っ込められ、アメを取り損ねた。
「え、」
まさかそんなことをされるとは思っておらず、固まっていると
「何しとんねんお前Aさん困ってるやないか」
と山内さんからツッコミが入る。
えぇ本当に。なんて考えながら濱家さんをみると
「あぁ、いやその、今渡すのもあれなんで、あとで楽屋で…ってそれもおかしいか」
と自問自答をしていた。でもせっかく濱家さんに関われる機会があるならそれを逃すのは惜しい。
「いいですよ。あとで伺いますね」
なんだかこの微妙な空気の中にいるのも居心地が悪かったので、私は早々に話を終わらせた。
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作者名:みぃこ | 作成日時:2023年2月16日 15時