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はじめ side
は「食べれます?」
急いで買ったので適当に選んだ、オムライスとクリームチャウダーを温めてAさんに選ばせる。
「……クリームチャウダー、で」
彼女はまだ遠慮気味で、すみません、と動作の後に必ずつく。
Aさんは、少しずつクリームチャウダーを口に入れる……と、涙を流し始めた。
は「え、え?」
オイラ、泣かせてしまった?とあたふたするとAさんが口を開く。
「マグロ以来です、こんなに美味しいもの食べたの」
と、泣きながら言った。
は「……何か、あったんですか」
「……父子家庭だったのですが、父が愛人を連れてきて……追い出されたんです」
Aは食べる手を止める。
「持ってきたものは1218円だけで、ホテルにも止まれないので山の中とか竹やぶとかで野宿してたら……最後の最後でマグロが食べたくなったんです」
少し恥ずかしそうに話を進める。
「マグロが好きなんです。だから最後の110円握りしめて、勇気出して回転寿司に入ってマグロ食べて……そのあとは、命を断とうかと考えてました」
突然、目が合ってドキッとする。
「でも、はじめさんが連絡先を渡してくれて"私を見てくれる人はまだいるんだ"って思ったら死ねなかったんです、だから助けを……」
は「ちなみに、今おいくつ……?」
「23です。仕事には就いていたんですが父の会社だったので辞めさせられました」
若いな、と俺は少し身を引く。
だから若さを感じたのか。
「私、朝……今からでもここを出ようと思ってます。はじめさんにはもう迷惑はかけられないです」
は「全然、いていいです」
「え……」
は「迷惑とか考える前にまず自分の身を考えてからにしてください。俺のとこでても、行く先はないでしょう」
「……」
図星なのか、口を閉じる。
は「朝になれば、俺の友達が出勤してくるけどそれも気にしなくていいです。その時俺が説明するので」
「……」
は「もしそれで"家に置いてられない"となったらその時は言います」
「わかりました、すみません」
は「ははは、いいんですよ」
Aさんはクラムチャウダーを食べきると、眠そうに目をこする。
は「眠るなら2号室に行きましょう」
「2号室……?」
彼女を2号室まで案内して、ソファーの上に寝る場所を作る。
「ありがとうございます……」
ソファーに寝っ転がるとすぐに寝息を立て始めた。
俺は編集があるからまだ眠れない。
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作者名:999 | 作成日時:2019年6月4日 2時