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珍しく善逸が声を荒らげて、俺に掴みかかるような剣幕で捲し立てた。
そうだ、何やってるんだ俺は。
急いで鬼を倒して、早くAの所に…
「もう、Aに時間は…ないんだぞ…!」
「すまない、俺はどうかしていた。鬼を斬って、急いで蝶屋敷へ行こう!」
そこからは早かった。
いつにも増して集中していた炭治郎と善逸の活躍により、目的の鬼は倒された。
炭治郎及び3人は、急いで蝶屋敷へと向かう。
そして、Aの部屋の前に着いた時。
座り込むようにして泣くなほ、すみ、きよの姿に炭治郎達は最悪の結果を予期した。
まさか、もう…?
と、部屋の中から胡蝶しのぶが暗い顔で出てきた。
炭治郎は、掴みかからん勢いで胡蝶にAの容態を尋ねる。
「…今夜が、最後になるかもしれません」
「え…?う、嘘です、だってAはまだ2つ残っているはずです!聴覚と、嗅覚の2つが残っていますよね?!だったら!!」
「病の進行が早いんです…!一晩で2つとも失ってしまう可能性も十分にあります、ですから!!
…お別れを…伝えておいた方が、いいかもしれません…」
そう言う胡蝶の瞳には涙が浮かんでいて。
本当にAの死期が目の前なのだと、嫌に理解してしまった。
「善逸、中に入ろう」
「……いや、お前だけ入れ」
「?!なんでだ、Aが最後かもしれないと、今しのぶさんが…」
「あのさぁ!!」
善逸が俺の言葉を遮るようにして叫ぶ。
その顔は影っていて、どんな表情をしているのかは見えない。
「あのさ、炭治郎。俺、Aのこと好きだよ」
「?…あぁ、俺も────」
「違う。
Aのこと、愛してるって意味で好きなんだよ。
友達だからじゃない、好きなんだ」
「え、」
その時、炭治郎の胸の奥に何やら表現し難い感情が渦巻くのを感じた。
どす黒く、重くて、まるで曇天のような何かが、叫び出したいほどに芽生える。
なんで、俺はこんな気持ちになるんだろう?
「そんな音させといて、まだ気づかないんだな、炭治郎は。
鈍いにも程があると思うよ」
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みょん(プロフ) - 複雑な気持ちになりました。貴重な体験、楽しい時間をありがとうございました。! 長文失礼しましたm(_ _;)m (2023年3月19日 21時) (レス) id: 1ba8aac85f (このIDを非表示/違反報告)
みょん(プロフ) - なりました。夢主の気持ちもめっちゃ分かるし炭治郎の気持ちもわかります。五感がなくなっていくという感覚などは、分からないけれど、本当に夢主になったような気持ちで読めることができました。作者様は本当に凄いですね。この作品を読んで言葉で表せないくらい (2023年3月19日 21時) (レス) id: 1ba8aac85f (このIDを非表示/違反報告)
みょん(プロフ) - めっちゃ感動しました(泣)大号泣です!感無量です。神作品を作ってくださってありがとうございます。特に最後の子守唄を歌うシーン。段々と炭治郎の声が聴こえてこなくなって、もっと大きな声で歌ってとお願いするシーンがなんというか、とても切ない気持ちに (2023年3月19日 21時) (レス) @page36 id: 1ba8aac85f (このIDを非表示/違反報告)
ワンコ - 感動(>人<;) (2021年3月29日 23時) (レス) id: 1e9b1e52b8 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - 柱の物語みたいです (2021年1月19日 22時) (レス) id: 751c2cfce8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハナ | 作成日時:2019年11月23日 10時