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顔をぎゅ、と顰めて、悲しげな声で炭治郎は私の頬をゆるりと撫でた。
言えない、言えないよ。
君の悲しむ顔は、見たくないもの。
「本当に、何も無いよ。だって、お医者様にも──」
「…嘘をつかないでくれ」
心臓が凍りついた。
なんで、その確信めいた言い方するの?
どうして、私嘘はバレないはずだよね、だって甘露寺さんから貰った香袋…
そこで、ようやく気付いた。
治療のために、羽織を脱いでいたことに。
羽織の袖に香袋は入っている。
それが無ければ…当たり前の如く、私の嘘は炭治郎に筒抜けになる。
私って、なんてドジというか間抜けというか…ほんとに、
「どうしようも、ないよなぁ…」
「A?」
Aの瞳が、ゆらりと不穏に揺れたのを、炭治郎は見逃さなかった。
自分で聞いておいて、頭の中で「それ以上聞いてはいけない」と警鐘が鳴り響く。
でも、口は自分のものでは無いみたいに勝手に動いて。
「教えて、くれ」
こめかみを流れる汗も拭わぬまま、Aにそう問うた。
駄目だ、聞いてはいけない。
これを聞いたら、もう─────
「炭治郎、私ね」
もうすぐ、死ぬんだよ。
掠れた震え声で、Aはそう告げた。
何を、言ってるんだ?
頭に浮かぶのは、疑問符ばかりだった。
なんだそれ、嘘なんだろう?
だって、そんなのあんまりじゃないか?
どうして、なんで。
「死ぬって、どういうこと、なんだ」
舌が上手く回らない。
頭は強く殴られたようにぼうっとして、思考もハッキリとしなくて。
「五感を無くしながら、死ぬんだって。多分、1ヶ月で死ぬの。長くて、1ヶ月だよ」
やめてくれ。
そんなふうに笑わないでくれ。
気がついたら、Aを抱きしめていた。
Aの心が、悲鳴をあげていた。
壊れて、しまいそうだった。
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みょん(プロフ) - 複雑な気持ちになりました。貴重な体験、楽しい時間をありがとうございました。! 長文失礼しましたm(_ _;)m (2023年3月19日 21時) (レス) id: 1ba8aac85f (このIDを非表示/違反報告)
みょん(プロフ) - なりました。夢主の気持ちもめっちゃ分かるし炭治郎の気持ちもわかります。五感がなくなっていくという感覚などは、分からないけれど、本当に夢主になったような気持ちで読めることができました。作者様は本当に凄いですね。この作品を読んで言葉で表せないくらい (2023年3月19日 21時) (レス) id: 1ba8aac85f (このIDを非表示/違反報告)
みょん(プロフ) - めっちゃ感動しました(泣)大号泣です!感無量です。神作品を作ってくださってありがとうございます。特に最後の子守唄を歌うシーン。段々と炭治郎の声が聴こえてこなくなって、もっと大きな声で歌ってとお願いするシーンがなんというか、とても切ない気持ちに (2023年3月19日 21時) (レス) @page36 id: 1ba8aac85f (このIDを非表示/違反報告)
ワンコ - 感動(>人<;) (2021年3月29日 23時) (レス) id: 1e9b1e52b8 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - 柱の物語みたいです (2021年1月19日 22時) (レス) id: 751c2cfce8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハナ | 作成日時:2019年11月23日 10時