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「ならば何故、先程屋敷を出る時に俺たちの名をあんな風に呼んだのだ」
「あんな風、って」
「なぜ、泣いていた」
私、泣いてたの?
気づかなかった。
というか、何故煉獄さんが知ってるの?
まさか、起きていたの?
「あれは、別に…」
「もういいの、Aちゃん」
蜜璃ちゃん、泣いてる?
声が震えてる。
ごめんね、傍に寄って抱きしめてあげたいのに、足が言うことを聞かないの。
「師範がAちゃんの様子がおかしいって、だからお館様に急いで鴉を飛ばしたわ、そしたら…お館様は、全部教えてくださった」
あァ、全部…全部バレてしまったんだ。
もう、無理しなくて、いいんだ…
そう思った瞬間、なんとか踏ん張っていた足の力が抜け、為す術なく花の中に体が沈んでいく。
ああ、なんと花の良い香り。
「水瀬!!!」
ふわ、と上半身に浮遊感。
だいぶ遅くなった瞬きの後、視界に広がるのは柱の皆の顔。
「えへ、バレちゃったんですね」
辛い時ほど、笑え。
残していく者よりも、残される人の方がどれだけ辛いことか。
私が苦しい顔や泣くような顔をしてみろ、みんなはもっと辛いだろ。
笑え、笑え、笑え!
「もういいんだよ…泣いてもいいんだ」
「え、」
宇髄さんは瞳に涙を滲ませながら、もういい、いいんだ、と私の頬を撫でた。
泣いても、いいの?
だって、笑ってなきゃ、
「こんな時まで、無理することは無いんだ…!」
堰を切ったように涙がボロボロと頬を伝う。
だめだめ、皆の前では笑顔でいなきゃ、心配させちゃいけないでしょ!
笑うのよ、笑って、お願い、笑って…
どうしたって私の口角は上がってくれなくて。
代わりに嗚咽が漏れだした。
私の顔は、きっととても不細工になっているだろう。
嫌だな、見られたくないよこんな姿。
「どうして何も言わなかったァ…?俺たちはそんなに頼りないかよォ」
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なーな - 初見です! 完結お疲れ様でした!めちゃくちゃおもしろかったし感動で涙でしたっっっ!!! 素敵な小説をありがとうございました! (2021年11月30日 15時) (レス) @page45 id: 03957af64f (このIDを非表示/違反報告)
もちゃ - 泣いちゃったw (2021年1月25日 0時) (レス) id: b4bfec10e3 (このIDを非表示/違反報告)
うさぎもち - 号泣しすぎて...う"う"う" (2021年1月20日 22時) (レス) id: 676d0f88d2 (このIDを非表示/違反報告)
さけふろ - 感動です! (2021年1月11日 15時) (レス) id: c7bf1c88de (このIDを非表示/違反報告)
夢鸞 - 号泣です。素晴らしいお話、ありがとうございました。 (2020年11月29日 12時) (レス) id: 640116ca2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハナ | 作成日時:2019年9月30日 13時