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そう言って着物に緩く微笑みかけると、お姉さんはふふ、と笑って「着物も素敵な人に買っていただけて喜んでます。」と言った。
お会計を済ますと、買った着物の他にも何やら色々入っている。
「あの、なんか間違えて入ってますよ」
「いいえ、間違えてないですよ」
「でも買ってないものが…」
「それ、私からです。
お姉さん可愛いから。
帯と帯留め。他の人には内緒ですよ。」
「そんな、悪いです!せめてお金を払わせてください」
「いいんです、いいんです。…だってお姉さん、」
耳に口を寄せて、そっと囁かれた。
花咲病でしょ、と。
サッと顔から血の気が引き、思わず後ろに後ずさった。
どうして、どうして。
お姉さんは困ったように眉尻を下げて、苦笑した。
「ごめんなさいね、言い当てるようなことして。
実はね、私の妹も…花咲病で昨年この世を去ったの。」
「妹さんが…?」
「ええ。…それは綺麗で残酷な最後だったわ
花咲病の人からは独特の甘い香りがするの
優しい毒のような、悲しくて甘い匂い
あなたからも、妹と同じ匂いがしたわ
だから、ほっとけなかったの。
あなたに、少しでも幸せな最後が訪れるように、それは私からの贈り物。お願い受け取って?」
震える手で私の頬を撫でて、懇願するように、そうお姉さんは言った。
彼女は私と彼女の妹さんを重ねてるのかもしれない。
だったら、
「ありがたく、受け取ります。」
お店を出る時、お姉さんをふと、振り返った。
悲しそうな瞳。
溢れんばかりに溜まった涙。
ああ、この人もきっと…
「あの…今日はほんとにありがとうございました。あなたのおかげで私、きっと素敵な最後を迎えられる」
だから、もう泣かないで。
あなたの妹さんもきっと、あなたが泣く日々を望んでない。
「また、いつか。」
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なーな - 初見です! 完結お疲れ様でした!めちゃくちゃおもしろかったし感動で涙でしたっっっ!!! 素敵な小説をありがとうございました! (2021年11月30日 15時) (レス) @page45 id: 03957af64f (このIDを非表示/違反報告)
もちゃ - 泣いちゃったw (2021年1月25日 0時) (レス) id: b4bfec10e3 (このIDを非表示/違反報告)
うさぎもち - 号泣しすぎて...う"う"う" (2021年1月20日 22時) (レス) id: 676d0f88d2 (このIDを非表示/違反報告)
さけふろ - 感動です! (2021年1月11日 15時) (レス) id: c7bf1c88de (このIDを非表示/違反報告)
夢鸞 - 号泣です。素晴らしいお話、ありがとうございました。 (2020年11月29日 12時) (レス) id: 640116ca2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハナ | 作成日時:2019年9月30日 13時