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体育館は静まり返っていた。
ここを勝てば「全国出場」。
最後の壁。
序盤、相手の気迫に押され、リードされる展開。
侑「……ちょ、なかなか手強いな」
治「焦んな。ここから巻き返すで」
角「次、レフト止めに行く」
銀「任せて」
タイムアウトの間、私は前に出る。
『まだ流れはこっちに来てない。でも、みんなの力なら、絶対いける。信じてるから』
その一言が、不思議とチームの空気を変えた。
侑「おし、スイッチ入ったわ。やったるで、治!」
治「……おう!!」
後半、稲荷崎の攻勢が加速。
鋭いコンビネーションと鉄壁の守備で、相手を封じていく。
マッチポイント――
侑のトスが、角名へ。
角「ラスト。……行くよ」
放たれたスパイクは、相手コートに突き刺さる。
笛の音が響き、会場がどよめいた。
勝利。
円陣の中、誰も言葉を発さなかった。
ただ、握り合った手の熱と、鼓動の高鳴りだけがそこにあった。
侑「……勝った、な」
治「全国、行けるんやな」
銀「……やっと」
角「これで、スタートライン」
私は小さくうなずいて、声を震わせた。
『……みんな、おめでとう。ほんとに、すごかった』
侑「……泣きそなん、自分の方やんけ」
『ちょっと、黙ってて』
みんなが笑った。
体育館の窓から差し込む夕陽が、彼らの背中を照らしていた。
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心 - 終わり方最っ高です‼︎ (8月8日 13時) (
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