4-26.ぶりっ子ちゃんの齟齬 ページ27
「祝、全員集合ー！！」
中央の机をくっつけ、持ち寄ったお菓子を広げて菓子パが始まった。相当な量だが、取り憑かれたように貪るもりりん先輩を見れば余る心配はなさそうだった。
「どうぞ遠慮なく！」ともりりん先輩が持参してきた袋詰めのチョコレートを勧められた。蘭ちゃんと一緒に取り出すと、甘い匂いとともにあの日のチョコレートの包み紙の山の記憶が広がった。その記憶の隅っこには泉先輩の無表情がぼんやり孤立している。今もそうだ。わたしたちから距離を取り、黒板前の実験台に頬杖をつきながら、
「洋洋、ごきげん洋！ とんでもないことに気づいた！ 『総理大臣』と『草履大事』で韻が踏める！」
「それは南総里見の大発見伝だね」
という夏目先輩と夢野先輩のやりとりを砂漠のような表情で眺めている。その虚無を乗せた視線の存在に先輩二人も気づいているらしく、ことさらに声を張って笑い話のおもちゃ箱を惜しみなくひっくり返すが、なかなか天の岩戸伝説のようにはいかない。目配せして肩を落とす二人に、もりりん先輩はそっとチョコレートを差し出した。それと同じものをわたしはずっと握り締めていたことに気づき、個包装のギザギザ部分に手をかけた。
……開かない。
元々開けにくいものだと信じたかったが、わけなく開けて優しい甘さに元気を取り戻す二人と、すでに食べて次に手を移す蘭ちゃんを見ていると……高校生にして小学五年生の平均値レベルを誇る己の握力が原因かもしれない。いいやそんなはずはと全身を使って引っ張った。結果は同じだ。絶句。脱力。
「どしたのもえたん？」
もりりん先輩にバレた。たちまち注目が集まる。恥ずかしいが正直に「ふ、袋さんがぁ、ちょっぴりごきげんナナメみたいでぇ……てへ」と白状した。
するともりりん先輩と夏目先輩が心得たというように冗談っぽく笑い出した。
「な〜るほどぉ〜！ もえたんってばお上手ー！」
「抜かりないなぁ〜流石だよ百恵ちゃん！」
夢野先輩も感心げに頷いている。完全にぶりっ子芸だと思われている。誤解だ。けれど無理もない。確か前にもこんなことがあったような。
「せんぱぁい違うんです〜！ 本当に開かないんですよぉ〜〜！」
と主張しても却ってぶりっ子性が増すばかりで、ネタと受け取られ笑って流される。「あ……開けようか？」と助け舟を出してくれた蘭ちゃんが、これ以上ない救いだった。
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やま(プロフ) - 更新待ってます!! (2021年9月19日 18時) (
レス) id: 0eb68c7075 (このIDを非表示/違反報告)
柚子 - もえたん可愛いですね！私自身、ぶりっ子の事が嫌いまでとはいかないけど少し苦手意識があったんですが、この作品を読んでぶりっ子への意識が変わりました！ありがとうございます！これからも更新頑張って下さい！！ (2021年8月24日 1時) (レス) id: 12dcb448c9 (このIDを非表示/違反報告)
夜瑠 - 面白くて、『一周回ってぶりっ子を許せる小説』から一気見しちゃいました！！皆大好きです！！次の更新楽しみにしてます！！ (2021年7月19日 19時) (レス) id: ef33b3228d (このIDを非表示/違反報告)
桜夜桜もち - こんな一生懸命で可愛いぶりっ子なんて許す以外に方法あります…?! (2021年7月17日 15時) (レス) id: 54667db88c (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - リカさんさん» ありがとうございます！！お楽しみいただけてとっても嬉しいです！これからもぶりっ子の可能性を発掘していきます！偏見や先入観だけで片付けるには、あまりにももったいない逸材なので……！ (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆の字 | 作成日時：2020年3月30日 18時
