4-19.ぶりっ子ちゃんの帰路 ページ20
結局、洋先輩は見つからずじまいで、下校時刻までまったり雑談だけして部室を閉めることになった。
秋の夕空の下。徒歩組のわたしと夏目先輩は、一足先に校門で待つ。外は思いのほか暗くて肌寒かった。やがて蘭ちゃんともりりん先輩が自転車を押しながら来て、解散した。もりりん先輩の後を追うように走る蘭ちゃん。束の間「ねぐらん」の記憶に気を取られていると、またねと夏目先輩に手を振られて我に返った。蘭ちゃんともりりん先輩の背中はもうなかった。夏目先輩もわたしとは反対方向の帰路を足早に辿り始めていた。
いつもより軽い鞄を肩にかけ直し、内股をやめて普通に歩く。学校周辺は急な坂が多い。行きは登り坂メインで辛いが、その分帰りは楽だ。一日の疲れが溜まった両足を滑るように運んでくれる。家に近づくにつれて坂の勾配は緩くなる。秋色の葉っぱが散るこの平坦な歩道を歩けば、散歩中の犬に遭遇しない日はない(何故かもえたんになってから吠えられる回数が増えた)。
薄い茜色の筋雲が、乾き気味の筆で引いたように伸びている。一緒に混ざる夜色の黒雲から夕日が覗くと、黄色やオレンジがグラデーションを作りながら輝いた。夕映えに見惚れることが出来るのは、充実した一日を送れた証拠だ。間の抜けたカラスの鳴き声と虫の音色を聴きながら、今日の雑談を思い返す。
もりりん先輩は四人姉弟の長女で、娯楽同好会の他に家庭科部に所属している。部活で使う食材をこっそりつまみ食いしては、元ヤンの部長さんに半殺しにされかけているらしい。
夏目先輩は今夏の大きな水泳大会(スポーツに疎いので詳しくは分からない)を最後に、水泳部を引退した。結果は200m個人メドレーで二位。他にも数々の大会で優秀な成績を残したことから早い段階でスポーツ推薦を貰い、つい先日合格が決まったらしい。「受験勉強しなくていい！ ヤッターッ！」と喜んでいた。
雑談中、顧問になる予定の先生が顔を出してきた。二年の化学を担当している。常に暇そうにしているところをもりりん先輩が目をつけ、夏目先輩と力を合わせて口説き落としたらしい。眼鏡をかけたスキンヘッドのおじいちゃんだった。物腰の柔らかい雰囲気で安心した。
明日は全員で集まって、親睦会という名目で簡単なレクリエーションをするらしい。今日は自分から話せず聞き手に回ってばかりだったが、次こそは「もえたん」を余すことなく発揮せねばと気合を入れつつ、自宅のドアに鍵を挿し込んだ。
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やま(プロフ) - 更新待ってます!! (2021年9月19日 18時) (
レス) id: 0eb68c7075 (このIDを非表示/違反報告)
柚子 - もえたん可愛いですね！私自身、ぶりっ子の事が嫌いまでとはいかないけど少し苦手意識があったんですが、この作品を読んでぶりっ子への意識が変わりました！ありがとうございます！これからも更新頑張って下さい！！ (2021年8月24日 1時) (レス) id: 12dcb448c9 (このIDを非表示/違反報告)
夜瑠 - 面白くて、『一周回ってぶりっ子を許せる小説』から一気見しちゃいました！！皆大好きです！！次の更新楽しみにしてます！！ (2021年7月19日 19時) (レス) id: ef33b3228d (このIDを非表示/違反報告)
桜夜桜もち - こんな一生懸命で可愛いぶりっ子なんて許す以外に方法あります…?! (2021年7月17日 15時) (レス) id: 54667db88c (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - リカさんさん» ありがとうございます！！お楽しみいただけてとっても嬉しいです！これからもぶりっ子の可能性を発掘していきます！偏見や先入観だけで片付けるには、あまりにももったいない逸材なので……！ (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆の字 | 作成日時：2020年3月30日 18時
