3-4.ぶりっ子ちゃんの克服 ページ5
本当は六限目の情報の時間もこうしていたかったが、先生が配布してきたプリントが思索の邪魔に入った。
「プレゼンテーション」という、目にしただけで顔をしかめたくなる単語が見出しにあったのだ。さらに追い打ちとばかりに、目の前のプロジェクターで映し出された画面にもその不快な単語がでかでかと現れたので、現実を受け入れるほかなかった。
「好きな人同士でペアを組んでください。大体二人〜四人くらいかな」
途端、わたしは激烈な動悸に襲われた。けど、すぐおさまった。
もう、その悪魔の言葉に怯えなくていいんだ。
みんなは席から立って仲の良い人同士でくっつく。突然、その光景が、一学期の記憶と重なった。入学式の初日、各々が新しい友達に出会って楽しそうに喋る中、友達作りに失敗したわたしはポツンと自分の席に座って時間が立つのをひたすら待っていた、それはそれは苦々しいあの記憶と。
もうそれも、過去の話なんだ。
出来ていくグループの塊を丁寧に縫って――蘭ちゃんが来てくれた。
「……一緒、に……いいかな……？」
遠慮がちにわたしに尋ねてくる。
――そんなこと、聞くまでもないじゃないか！
「うん、やろっ♪ 一緒に！」
拳を顎につけた、いつものぶりっ子ポーズを取りながら、笑顔で答えた。
直後、また例のぶりっ子の迷いがわたしの胸に小さく渦巻くが、蘭ちゃんは安心したように、微笑んでくれた。
〜〜〜〜〜
パワーポイントを使ったプレゼンテーションで、テーマは自由。発表の時間は五〜七分程度。
大まかな説明の後、決まったペアでテーマを考える時間を与えられたのはいいものの。
「どうしよぉ？」
「どうしよう……？」
さっきからこのやり取りしかしていない。
無趣味が災いして、調べたいことが全くない。蘭ちゃんも、自己紹介で趣味は考え中と言っていたので、多分わたしと同じ気持ちだろう。
考えに考えて、出てこなくて、助けを求めるように相手を見れば、ちょうど目が合って、あはは、と乾いた苦笑い。これで何度目だろう。「自由」が、ここまでわたしたちを悩ませるとは。
わたしは真っ白な画用紙と色とりどりのクレヨンを渡され、何でも描いていいよと言われても、クレヨンを握りしめたまま黙りこくる人間だ。嬉々として自分の好きなものを自由に描ける人が羨ましい。君はこのテーマでやるように、と先生に縛りを設けられた方がいっそ楽だった。
わたしたちは頭を抱えた。
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やま(プロフ) - 面白いです、笑っちゃいました。 (2021年9月19日 13時) (
レス) id: 0eb68c7075 (このIDを非表示/違反報告)
無気力に自信が有る人 - あ、真白と同一人物です！ (2021年7月25日 17時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
無気力に自信が有る人 - 思わず笑っちゃいました！しかも、なんか余計にクラスの人に�猜僂陛朖瓩辰道廚錣譴修Δ覆海箸鬚錣兇錣供帖帖帖帖�この小説凄く面白いです！ (2021年7月25日 17時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - 真白さん» ぶりっ子についてプレゼンする人なんてそうそういないですよね（苦笑） (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - Rukia (ゆっくりゆる)さん» ありがとうございます！！一人一人の登場人物をこんなに丁寧に見てくださって本当に嬉しいです！（いつか名前も覚えていただければ大変恐縮です！）りうむちゃんのことも好きになってもらえて嬉しいです、ぜひ推してあげてください！ (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆の字 | 作成日時：2019年12月7日 15時
