3-15.ぶりっ子ちゃんの歓迎 ページ16
スマホをソファに捨て置き、急いで玄関のドアを開けた。
「いらっしゃ――」
危ない、と口を噤んだ。だって後ろにはお母さんがいる。お母さんは「もえたん」を知らない。そんな状況で「いらっしゃ〜い♡ ようこそもえたんの麗しき桃園へ♡」なんて言ったらどんな顔をするか。一呼吸置いてから、「朝戸衣百恵」の声で言った。
「いらっしゃい、来てくれてありがとう！ ……塒さん！」
「朝戸衣さん、お、お邪魔します……っ！」
深々と頭を下げる蘭ちゃん。想像通り、素朴で落ち着いた雰囲気の私服だった。わたしの普段のファッションと瓜二つだけど、「もえたん」のイメージを崩したくなかったので、今日だけ出来る限り女の子っぽい薄桃色の服を引っ張り出してきた。
「あなたが蘭ちゃんね！ いつも百恵がお世話になってます〜。本当にありがとうねぇ」
「いっ、いえいえ、こちらこそ……っ！ わ、私、あのくじが引けて、すごく嬉しくて、この日をずっと楽しみにしてました……！」
「く、くじ？」
「はい。確か……もえもえ♡ ラッキーくじっていう……」
いけない。蘭ちゃん、いきなり何を言い出すんだ！
「え、も、もえもえ……？」
お母さんの困惑がわたしに向く。
もえたん、大ピンチ。
「あ、あーっ！ ね、塒さん！ 外すっごい暑かったでしょ！ ささ、早く上がって上がって！」
「う、うん……。あ、これ、心ばかりですが……」
「わあ、シュークリーム！？ もえた――げふんっ！ わたしの大好物だぁ〜！」
「わざわざありがとう、ゆっくりしてってねぇ」
いまいち困惑が晴れていないお母さんに見送られ、わたしは蘭ちゃんの背中をグイグイ押して無理やり中に入れた。
そして二人で階段を登って二階に辿り着いた時、ようやく「もえたん」に戻った。
「ごめんねぇ〜騒がしくてっ。実はねぇ、親の前では『もえたん』はヒミツなの♡」
「そ、そうだったの……？ ご、ごめんね、余計なこと言って……」
「ううんっ気にしないでっ♪ ここが、もえたんのヒミツの桃園だよぉ♡」
そう言いながらも数秒躊躇ったが、ゆっくりと、自室のドアを押した。
「……何にもない、つまんない部屋だけどねっ♪」
えへへっと空疎なぶりっ子笑い。けれど少ししてから、蘭ちゃんはううんと首を横に振った。
「朝戸衣さんの部屋……すっごく落ち着く」
昨日想像していた何十通りもの表情のどれも属さない、優しい顔をこちらに向けてくれた。
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やま(プロフ) - 面白いです、笑っちゃいました。 (2021年9月19日 13時) (
レス) id: 0eb68c7075 (このIDを非表示/違反報告)
無気力に自信が有る人 - あ、真白と同一人物です！ (2021年7月25日 17時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
無気力に自信が有る人 - 思わず笑っちゃいました！しかも、なんか余計にクラスの人に�猜僂陛朖瓩辰道廚錣譴修Δ覆海箸鬚錣兇錣供帖帖帖帖�この小説凄く面白いです！ (2021年7月25日 17時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - 真白さん» ぶりっ子についてプレゼンする人なんてそうそういないですよね（苦笑） (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - Rukia (ゆっくりゆる)さん» ありがとうございます！！一人一人の登場人物をこんなに丁寧に見てくださって本当に嬉しいです！（いつか名前も覚えていただければ大変恐縮です！）りうむちゃんのことも好きになってもらえて嬉しいです、ぜひ推してあげてください！ (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆の字 | 作成日時：2019年12月7日 15時
