1-7.ぶりっ子ちゃんの反省 ページ8
一限が終わったと同時にトイレに駆け込んだ。この忸怩たる思いをどうにかしたかったのだ。
あくびをしていないのに目尻に涙が溜まってくる。跡が残らないように、慎重に拭った。
狭い狭い個室の中で、一人反省会を開いた。
あのぶりっ子はよろしくなかった。
上目遣いは相手との高さ的に不可能だった。ぶりっ子ポーズは緊張で忘れていた。天然ちゃんエピソードが滑った。そして、何よりも。
田山君との距離感を掴めていなかった。
彼には彼のパーソナルスペースがあるというのに、自分のアピールに夢中になって、少しも汲もうとしなかった。彼が終始引いていたのは至極当然だ。わたしは、自分本位のとてつもなく悪いぶりっ子を演じてしまった。次から彼にどんな顔を向ければいいのだろうか。
「なんかさー、さっきぶりっ子っぽいテンションの子いたよねー」
心臓が口から飛び出そうになった。扉の向こうから快活そうな声が聞こえる。手洗い場で喋っている。
「いたいたー。茶髪のツインテールの。男子と一生懸命会話しようとして、空回りしまくってたけど」
「無理してる感があって痛々しくて見てられんかったなー」
わずかな扉の隙間を覗いてみる。後ろ姿でも分かる。さっき目が合った女子たちだ。心臓が嫌な音を打っている。聞かなきゃよかったと後悔しているのに、全身が硬直して耳を塞ぐことができない。
「あの子さー。友達いないのかな」
「どーなんだろー。もしそうならウチらのグループに入れてあげる？」
「ん〜、様子見でいいんじゃない？ かえって気を遣わせちゃうかもしれないし」
「まぁ、そうだね〜」
わたしの話題はここで終わり、談笑と足音が遠ざかっていく。トイレを出たようだ。
何を言われるかビクビクしていたが、幸い心を抉られるような陰口はなかった。良い人たちで安心した。ただし彼女たちの言う通り、やはりさっきのぶりっ子は悪かった。
そろそろ二限目が始まる。気持ちを切り替え、わたしも教室に戻った。
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酔風 - 面白かったです…夏目先輩かっけぇ！萌ちゃん許せるどころかファンになりそう…。続編読んできます(｀･ω･´)ゞ (2021年7月25日 10時) (
レス) id: d8696aafac (このIDを非表示/違反報告)
夜瑠 - 夏目せんぱぁああい！！いつか、いつか言紡高校に入学してもいいですかっ！？！？ (2021年7月19日 17時) (レス) id: ef33b3228d (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - 初めまして！こんな小説を求めていました！この小説を読んだ方が、ぶりっ子＝悪女とかでは無くて、ぶりっ子は一つの個性なんだなって思ってもらえると良いですね！ももたんめっちゃ好きです！頑張ってください〜！ (2021年7月17日 15時) (レス) id: da4daeacca (このIDを非表示/違反報告)
桜夜桜もち - 「ふんぬぁぁああ゛ぁあ゛ァあッ！゛！」 握力計ったときのこれ好きですwwwwwww (2021年7月17日 14時) (レス) id: 54667db88c (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - 真白さん» ありがとうございます！！確かにぶりっ子の言動を見ていると、自分にも思い当たる節があったり……なんてことが自分にもあったりしました（笑）「ぶりっ子のふり見て我が振り直せ」ですね（汗）夏目先輩を好きになってもらえてすごく嬉しいです！ (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆の字 | 作成日時：2019年9月9日 17時
