2-6.ぶりっ子ちゃんの昼食 ページ24
次の日。四限が終わり、昼食の時間になった。
もしかしたらと、急ぎめに机の上を片付け、五限の準備をし、お弁当を持って、勢いよく後ろを振り向いたが。
案の定だった。
遥か後ろの塒さんは、すでに近くの女子グループに一緒に食べようと誘われ、遠慮がちに机をくっつけていたところだった。わたしが入る隙なんてない。
そっか。そりゃあそうだ……。
席を占領されないように、机とイスに荷物を置いた。そしてお弁当を抱きしめるようにして、人知れず教室を後にした。
〜〜〜〜〜
わたしだけのランチスペースにやって来た。真っ暗なので電気をつけた。ついでに換気扇も。今日も誰もいない。換気扇の風音だけがわたしを迎えてくれる。鏡で身だしなみをチェックしながら手を洗った。
今日はどのトイレで食べようか。
確か、一学期最後の日は左の一番手前だったはず。でも今日は気分がいまいち乗らないから、右の一番奥にしよう。
個室の清潔度チェックをしてから、中に入って扉の鍵をかける。ふたが閉まった便器に座り、膝の上でお弁当を広げた。
ここは絶好のランチスペースだ。一階の職員室に近いこのトイレは、わたしが見る限りいつも人がいない。わたしの学年の教室は四階で、上級生はその下に続くから、トイレに行くときは普通教室と同じ階のを使う。なら職員室の近くだから教員用かと思ったが、そういった文言もない。生徒も先生も使わない。そもそも存在を知らない人だっているかもしれない。一体どこに需要があるのやら。謎のトイレだ。
ここを見つける前は、教室でぼっち飯をしていた。ちゃんと味わおうとせず胃に詰め込み、早々に食べ終えると、昼休みが終わるまで教室を出てひたすら校内を散歩していた。そんな時に見つけたのだ。わたしの束の間の居場所を。
個室はすべて洋式で、右に四、左に三の計七個。普段使うトイレほど広くないが、ひとりなら窮屈感は感じないし、比較的清潔だ。
とはいえ、はじめこそは便所飯(というと惨め極まりないので、上品に「おトイレランチ」と呼ぶことにする)に抵抗があった。けれど冷静に考えてみると、ひとり寂しく食べる姿をクラスメイトに晒すより、教室に出ることで「わたしは他のクラスの友達と食べるんだ」というごまかしが利く。その上、誰にも急かされることなく静かにまったり食べられる。おトイレランチはそう悪いことばかりじゃない。
……ああ、でも。やっぱり。
寂しい。
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酔風 - 面白かったです…夏目先輩かっけぇ!萌ちゃん許せるどころかファンになりそう…。続編読んできます(`・ω・´)ゞ (2021年7月25日 10時) (レス) id: d8696aafac (このIDを非表示/違反報告)
夜瑠 - 夏目せんぱぁああい!!いつか、いつか言紡高校に入学してもいいですかっ!?!? (2021年7月19日 17時) (レス) id: ef33b3228d (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - 初めまして!こんな小説を求めていました!この小説を読んだ方が、ぶりっ子=悪女とかでは無くて、ぶりっ子は一つの個性なんだなって思ってもらえると良いですね!ももたんめっちゃ好きです!頑張ってください〜! (2021年7月17日 15時) (レス) id: da4daeacca (このIDを非表示/違反報告)
桜夜桜もち - 「ふんぬぁぁああ゛ぁあ゛ァあッ!゛!」 握力計ったときのこれ好きですwwwwwww (2021年7月17日 14時) (レス) id: 54667db88c (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - 真白さん» ありがとうございます!!確かにぶりっ子の言動を見ていると、自分にも思い当たる節があったり……なんてことが自分にもあったりしました(笑)「ぶりっ子のふり見て我が振り直せ」ですね(汗)夏目先輩を好きになってもらえてすごく嬉しいです! (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆の字 | 作成日時:2019年9月9日 17時