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思い返せば、偽りに満ちた10年間だった。
田舎の小さな海街の出身であることはひた隠しにしたし、安月給で貯金なんてほとんどないのに、メイク用品はすべてデパコスで揃えた。身につけていたブランドバッグやアクセサリーも、本当はレプリカだった。そんな風にしてまで都会に馴染んでいるように見せたかったのは、きっとそれが"夢"だったからだ。
田舎の海街を出て都会で暮らせば、おしゃれで素敵な生活が待っているものだとばかり思っていた。だけど実際は、都会の街ゆく人は冷たいし、安い賃金で朝から晩までくたくたになるまで働いても、何も残らなかった。都会の生活は私が思い描いていた輝かしいものとはほど遠かった。ただただ、日々が流れていくだけのような感覚もあった。
ある朝いつもと同じように出勤して、20人足らずの社員全員が事務所に集められ、倒産と聞かされた時は鈍器で頭を殴られたようだった。テレビゲームをやっていたら突然誰かにコンセントを引っこ抜かれたような、そんなあっけない終わり方だった。
ミンギュの車のドアをばたん、と勢いよく閉めると"えーい、優しく閉めてください"と、持ち主の呆れたような声が響いた。車を降りると、昔から大嫌いだった生臭い魚や磯の香りが一気に鼻に抜けて気持ちがげんなりと沈んだ。組合の事務所のある方向とは真逆に足を向け、歩き出すと背後からまたミンギュの声がした。
「どこ行くんだよ」
「ちょっと、散歩」
「俺、先に事務所行ってるよ？場所わかるよね？」
「んー」
だんだんと遠のいていくミンギュの声を置き去りにして、防波堤の方へと歩き始める。その昔、この長い一本道を滑走路に見立てて自転車で駆け抜けた日のことを思い出しながら。
ざざん、ざざんと波が打ちつける音がする。水面が揺れるたびに太陽の光がきらきらと反射して、私に向かってくる。遠くに見える水平線に視線を向けると、あの頃に時間を巻き戻したみたいに、何も変わらない景色がそこに広がっていた。
もう二度と帰らないと誓ったはずの小さな海街に、私は帰ってきた。
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ばくちゃん(プロフ) - りりさん» りりさん、ありがとうございます (3月3日 0時) (
レス) id: d467c90aec (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - すごく好きです、更新楽しみにしてます、出てくる4人全員好きです。お母さんも好きです。元彼は多分好きにならなさそうです (3月2日 12時) (レス) @page47 id: 1885eeea1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ばくちゃん
| 作成日時：2025年1月13日 16時
