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住宅街を抜けて広い車道に出るとようやく大きく息を吐き出して、手に持っていたパーカーに腕を通した。スンチョルに借りたままのナイキのサンダルがざっざっとアスファルトを擦る音だけが、静かな道に響いた。あてもなく彷徨う足は、どこへ向かうでもない。
湿り気を含んだ潮風が頬を撫で、遠くで空き缶がからん、と転がる音がした。その音に耳を傾けたまま、ふいに足を止める。ポケットに両手を突っ込み、思い切り背中を反らせて夜空を見上げた。そこには無数の星が散らばり、漆黒の空に溶けるように瞬いている。目を引くような大きな月が冷たさのある光をあたり一面に降らせていた。
星って、こんなにたくさんあったんだっけ。
月って、こんなに明るかったっけ。
夜って、こんなに静かだったっけ。
思わず立ち尽くして、夜空にしばらく目を奪われた。ソウルで暮らしていた頃、借りていた部屋の窓から見えたのは隣のマンションの外壁だけ。忙しなく働いて、空を見上げようなんて考えたこともなかった。都会の街をゆく人たちも誰も狭い空を気にする様子はなかった。ビルの隙間や広告の隅に追いやられた、小さな空なんて、誰も見上げてなかった。
ここは空が広い。こんなにも広くて、果てしない。
だから、自分がすごく小さくて、何でもないもののように思えてくる。
潮風が髪をそっと揺らし、静かな夜の音が耳に染み込んでいき。遠くの方で、波が押し引きする音も微かに聞こえる。目の前に広がる空は、どこまでも続いていて。胸の中に淀んでいたもやついた気持ちが、ゆっくりと薄まり消えていくような気がした。だけど、空いたスペースに流れ込むみたいに寂しさがそこにじわりと滲んだ。
私はこんなところで何をやっているんだろうって、惨めになった。
パーカーのポケットに手を突っ込んだまま、私はまた歩き出した。月明かりだけを頼りに、静かな夜の道を。
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ばくちゃん(プロフ) - りりさん» りりさん、ありがとうございます (3月3日 0時) (
レス) id: d467c90aec (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - すごく好きです、更新楽しみにしてます、出てくる4人全員好きです。お母さんも好きです。元彼は多分好きにならなさそうです (3月2日 12時) (レス) @page47 id: 1885eeea1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ばくちゃん
| 作成日時：2025年1月13日 16時
