化け物が百二十八匹。 ページ41
NOside
一之瀬とてわかっていたのだ。
具材の準備をして、いつもより早起きをして。
弁当でもおにぎりでも、そう簡単にできるものではないことを。
ヒーロー科の彼らの生活は忙しい。
レベルの高い授業に、決して楽ではないヒーローになるための訓練。ヘトヘトになって帰ってからも復習、予習をしなければまず追いつけないので、毎日ギリギリの生活だ。
しかし彼らはそんな生活の中で貴重な時間を削り、一之瀬のために昼食を用意してくれた。
彼ら二人が今日なんとなく眠そうだったのは、気のせいではないだろう。
「……ふぅ」
手作りの料理なんて食べたのはいつぶりだろうか。
自炊など出来ない一之瀬はいつもコンビニで弁当やパンをまとめ買いして食事を済ませていた。
個性を使えばいくらでも好きな物を食べることができるが、「エネルギー補給するためにエネルギー使うなんてそんな馬鹿な話ねェだろ」と彼が言うため、それはしない。
彼にとって食事はただ生きる為の行為であって、美味しさや味の変化はどうでもよかったし、面倒くさい行為だった。
しかしそれは、昔からではない。
彼の母が生きていた頃は、彼は人並みに食事が好きだったし、それが楽しみになっていた。
＿＿『はい、A！お母さん特製からあげおにぎりだよ！』
彼は母の作るからあげおにぎりが大好きだった。
しょっぱい玉子焼きの方が好きなのも同じ理由だ。
だが最近はどうでもよかったのだ。どんな味でも食べられれば。
なのに。
＿＿『俺は、握り飯の具は唐揚げじゃねェと許せねェ』
＿＿『玉子焼きも、しょっぱいヤツのが好きだ』
そんなことを言ってしまったのは何故だろう。
久しぶりの手作りの料理に、懐かしさを覚えてしまったからだろうか。
「……アイツらアホみてェに喜んでたな」
一之瀬のテメェらにしては上出来、というどこまでも上から目線なその言葉だけで、彼らは飛び跳ねて喜んでいた。
なら、それ以上のことを言ったらどうなるのか。
「……『普通にうまかった』」
ぽとりと、小さく零してみる。
だがすぐにそれを一之瀬は鼻で笑った。
「流石に気持ち悪ィだろ。らしくねェ」
アイツらだってドン引きするに決まってる。
そう考えてから一之瀬は思考を止めた。
「……ふは、」
昼休み終了の鐘を聞きながら教室に入る彼の背中は、どこか楽しそうだった。
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名前決まらないドン(プロフ) - 戻ってくる事を祈って待っております (2019年5月11日 13時) (
レス) id: 54f25622c3 (このIDを非表示/違反報告)
あげあげ！ - 主人公のツンツンデレ具合がちょうど良すぎて死にそう(吐血) (2018年7月16日 23時) (レス) id: 94845ca325 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - うふさん» あなた様にこの小説が読み返されていることがとても幸福です！確かにみんな格好良いですよね…！ (2018年7月14日 13時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
うふ - 読み返すたび毎度思う、全キャライケメン。 (2018年7月12日 3時) (レス) id: 54f25622c3 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - 餅原 葵さん» 初めまして、コメントありがとうございます！一之瀬君が人気でとても嬉しいです…！そう言っていただけて本当に有難いです！更新頑張らせていただきます！ (2018年7月3日 18時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：●龍● | 作成日時：2017年12月25日 19時
