化け物が百十七匹。 ページ30
「大分話が長引いたが、結局俺が言いたかったのはこれだ」
「……どれだよ」
「そんな臆病なおまえが、無闇矢鱈に個性を使うわけがない」
「ッ！！」
ヒュッと息が引き攣った。
「何を心配してるのか知らんが、個性を一回使うだけでも躊躇するおまえに、個性を悪用する余裕があるとは思えない。だから俺はおまえの個性を知った瞬間から今まで、おまえを恐れたことはないよ」
「ッなんだよ、ソレ！理由になってねェよ！そんなんただのオマエの憶測で、」
「信頼関係っていうのはそういうもんだろ」
「しッ？！」
聞き慣れない単語にぐっと喉が詰まったような感覚に襲われ、軽く噎せる。
「信頼関係はメリットデメリットの話じゃないんだ。自分に得はないかもしれない。いつか相手に裏切られるかもしれない。でもそうじゃない。信頼関係ってのはそういうのを投げ捨てて、相手を信じてからやっとできるもんなんだよ」
「い、意味わかんねェ！んなモン必要ねェだろ？！」
「今はわからなくても、いつかわかる日が必ず来る。俺みたいにな」
ガタンッと椅子を倒して立ち上がった俺に、一瞬意味ありげに目を伏せた後ソイツは何かを訴えるような目を俺に向ける。
「おまえがあの日、USJで個性を使わなかったから俺はおまえを信頼できた」
「！」
「おまえがもし個性を使って敵を殺していたら、きっと結果は変わっていた。あの時俺たちの前に現れて敵をぶん殴ったおまえの勇敢な行動も、褒められることはなかった筈だ」
「は？」
「あの時現れたおまえは、間違いなくヒーローだった。俺を含めた、場の誰よりも」
クソワカメの目がすぅっと細まった。
「俺は一之瀬を信じてるよ。でもだからと言っておまえも俺を信じろなんてそんな無茶は言わん」
「……」
「その代わり覚えとけ。俺がおまえを信じてること、おまえの個性を理解してること、おまえに協力できるということ」
それだけでいい。今はな。
そう付け足したソイツは、一向に俺から目を離そうとしない。俺も負けじと目を見つめ続けるが、その圧力に耐えられなくなって目を瞑り、そして脱力して床に崩れ落ちた。
「ッ〜あああ本当ここはイかれたヤツしかいねェな！」
「逆だろ。俺たちは普通で、おまえが今まで会ってきたやつらがイかれてんだ」
「ハッ、ソレが教師の発言かよ」
「おまえこそそれが教師への口の利き方か？」
「うっぜー」
軽口を叩き合う俺たちの表情は、今までと比べモンにならねェほど穏やかだった。
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名前決まらないドン(プロフ) - 戻ってくる事を祈って待っております (2019年5月11日 13時) (
レス) id: 54f25622c3 (このIDを非表示/違反報告)
あげあげ！ - 主人公のツンツンデレ具合がちょうど良すぎて死にそう(吐血) (2018年7月16日 23時) (レス) id: 94845ca325 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - うふさん» あなた様にこの小説が読み返されていることがとても幸福です！確かにみんな格好良いですよね…！ (2018年7月14日 13時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
うふ - 読み返すたび毎度思う、全キャライケメン。 (2018年7月12日 3時) (レス) id: 54f25622c3 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - 餅原 葵さん» 初めまして、コメントありがとうございます！一之瀬君が人気でとても嬉しいです…！そう言っていただけて本当に有難いです！更新頑張らせていただきます！ (2018年7月3日 18時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：●龍● | 作成日時：2017年12月25日 19時
