君の他には何にもいらないよ

ことばにできない ytin ページ21

ytin
喋らないいのおくん、にベタ惚れなゆうとくん
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ゆうと、って呼ぶ貴方の声が何より好きなのに、どうしてそんなに悲しい顔をしているの。


いつも通り恋人の待つ家に帰って、いつも通りただいま、って声をかけて、抱きしめようとした腕がその形を保ったまま宙でピシリと固まった。なんてこった。

いのちゃんが泣いてる！？！？！

抱きしめられるのを拒否した恋人は、顔を隠していやいやって首を振って、部屋の隅っこへ逃げていく。
素足がぺたぺた音を立てて、ときどきすん、って鼻をすする音が聞こえる。

可愛らしさが尋常じゃない。

けれど悶えている暇もない。たった今、俺にはいのちゃんを笑顔にするというミッションが課せられた。

「いのちゃん、どうしたの」
「なにかあったの？」

ってとりあえず無難に質問してみる。
首をふるふる横に振るだけ。なんでもないよ、ってことらしい。
やっぱり教えてはくれないみたい。

仕方がないから、嫌がるのを承知でいのちゃんを後ろから抱き抱えて、腕の中へ閉じ込めた。
やっぱりちょっとじたばたしたけど、逃げられないとわかったのか、そのまま俯いてまたしくしく泣き始めた。
俺も心が痛いよ。

「いのちゃんいのちゃん、おれ、ただいましたよ。」
けど、いのちゃんの可愛い声が聴きたいな。って我慢できなくておねだりしたら、渋々、小さな声で、おかえり…、って言ってくれた。
ああもうそれだけできゅんきゅんする。
フル充電できたから、今度は俺がいのちゃんを元気にする番。

「いのちゃん、今日はおしゃべりがないねえ、そういう気分？ じゃあ先に、俺にお話させてね」

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