ページ ページ37
.
ユリが固まっているのを知ってか知らずか、ヴォルデモートは機嫌よく囁き続ける。
「杖無しの魔法が使えるか。よく育った、よく学んだ……。やはり、おまえは俺様の手元へ来るべきだったな。邪魔が入ったばかりに……」
しばらく冷たい不気味な手でユリのバラバラになってしまった髪を撫でると、彼は満足したのか「死喰い人」の輪の中へ戻っていった。
ユリには、ヴォルデモートの言っていることの意味がひとつもわからなかった。
恐怖で頭が回らない。
なんと言っていたっけ……。
そこで、視界の端で何かが動いたのが見えた。
ユリは目を見開いたが、すぐに泣くのを堪えるように顔を歪めて、こそこそとそちらへ這っていった。
「セドリック、動いちゃダメ。死んだフリしてて」
「君は……。なんだ？何が起きてる？」
「いいから寝てて。後で説明するから。課題の途中だけど、ちょっと緊急事態。すぐにダンブルドアが来るよ」
手の甲をつねって、声の震えを隠した。
セドリックは話したこともない後輩の言うことを聞いてくれて、微かにもたげていた首を元に戻し、目を閉じて、口を動かさないで囁いた。
「ハリーは？」
「先帰った」
「そう」
「大丈夫だよ」
「ユリ！何をしている」
甲高い声がユリを突き刺して、彼女はビク、と肩を震わせた。
しかし、すぐに我を取り戻して、もう感覚もない左手を右手でつかみながら、叫び返した。
「ネコいた」
その答えに、ヴォルデモートは眉を顰めた。
この状況ですることか？と顔にありありと出ている。
でもすぐに、その顔に愉悦の笑みが浮かぶ。
「やはり頭がおかしいな。どちらに似たのか」
「誰だ？」
ユリはその問いには答えなかった。
さりげに、二年前に「秘密の部屋」でハリーにそうしたように、セドリックを背中に隠す。
そのとき、ハリーが墓石の陰から飛び出した。
彼が「エクスペリアームス！」と叫ぶと同時に、ヴォルデモートが「アバダ ケダブラ！」と叫んだ。
目も開けていられないほどの眩い光だったが、ユリは目を見開く。
細い一筋の光が、もはや赤でもなく、緑でもなく、眩い濃い金色の糸のように、二つの杖を結んだ。
絶望的だった状況で、信じられないことが次々と起こった。
二人は宙に浮き、滑るように飛び、何もない場所に着地した。
二人をつないでいた金色の糸が裂け、やがて彼らを金色のドーム型の網、光の籠ですっぽり覆った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 835人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あまね(プロフ) - いっぱいちゅき！ (2023年2月12日 23時) (
レス) @page46 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ダイアナ(プロフ) - 不死鳥の騎士団編がみたいだけなのにTwitter運営さんはそれを許してくれないようですかなし (2023年2月12日 14時) (レス) id: 29bd455e8b (このIDを非表示/違反報告)
ダイアナ(プロフ) - みや。さん» ま、また凍結されてますね、、、ついてないですね、、、🥺 (2023年2月12日 14時) (レス) @page46 id: 29bd455e8b (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - みやさんの不死鳥の騎士団見たいですね(๑•̀ㅁ•́ฅ✨ (2023年2月11日 19時) (レス) @page46 id: b396ddc2bf (このIDを非表示/違反報告)
みや。(プロフ) - ダイアナさん» 一週間が経ってしまったので、移行しました。よろしくお願いします🙌 (2023年2月10日 13時) (レス) @page46 id: f8ad011ce4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みや。 | 作成日時：2022年9月21日 19時
