咲いた花は・・【男主】

19夜 ページ25

目を覚まして一週間がたった

何もない病室

ベッドの上に座りボーっと前を見る

病室の前は車いすの音や子供の声がする

なのにこの部屋には音がない

ローカを走る音だってよく聞こえる

下手したら心音だって聞こえるんじゃないかと思うくらいだ

そんなとき

この部屋に音がやってきた

病室の扉が開く音

それと荒荒しく息をする医師

そんなに生きてることを実感したいのか

荒々しい息とは真逆の俺の息

この静かな空間でさえ聞こえないくらい静かな息をした

医｢A君!!｣

いつもと顔色が明らかに違う

あ｢なんですか｣

それは実にシンプルなことだった

俺の両親が事故にあって死んだらしい

病院に来る途中

急ブレーキをかけた前の車にぶつかり

後ろを走っていたトラックに挟まれたらしい

両方とも即死だったそうだ

あ｢そうですか｣

俺の反応に医師は驚く

口を開こうとしたがそれをやめた

言いたいことはだいたい予想がつく

｢どうして君は泣かない 悲しまない｣

ずっと死のうとした俺からすれば

あっけないものだ

俺は死ぬのを許されない

でも生きることも許されない

それに比べ

生きることを許され

死ぬことさえも許された両親

前の俺からすればうらやましいが

何の思いもない

親に対する‶愛"さえ俺はなくなってしまったのか

感情のないこれじゃあ本当に

人形になってしまう

いや もうなっているんだったな

医｢妹さんはそうとうショックを受けている だからAくん 君が妹さんの事を支えてあげなさい｣

支えるも何も

あ｢会いもできない相手をどう支えろと?
あいつは もう俺の事を兄と思っていない それどころかきっと家族とさえ思ってくれてない
親が死んで何も感じていない俺を見てあいつはど思います? こんな俺が支えになると思いますか?
あいつをつらくさせるだけです｣

そう話した俺を見て

医師は顔を曇らせた

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