悪女の過去 5 ページ20
師範との別れの後、次に私を襲ったのはカナハの死だった。
上弦の弐と戦って亡くなったと赤城が言いに来た時、悔しかった。
知らず知らずのうちに泣いていた。
人を守れない自分が嫌になった。
性格が曲がっていくのがよくわかっていた・・・・・・のに。
私はそれを止めなかった。
’もうどうにでもなれ’
’この世界が嫌いだ’
言いたい思いもぶつけたい思いも沢山沢山あったのにそれらすべてを、自分に閉じ込めて何もなかったように振る舞っているうちに心が壊れたのだろう。
’死にたい’
そう願っても死は来なかった。
だから私は人を虐めるようになった。
ほんとはそんなことしたくない。
でもするしかない。
自分が壊れないように。
優しい師範の元での生活は楽しかったのにそこから一変して辛い生活が始まるとは思っていなかっただろう。
あの頃に戻れたのなら。
私は何を望むんだろう。
あの頃の私は欲しいものが沢山あって沢山のことを願っていた。
今、私があの頃に戻れるのなら・・・・・。
きっと、師が・・姉弟子二人が生きられる道を探すはずだ。
姉弟子達には虐められたけど大切なのは変わりないから。
でも、今更そんなこと願っても過去に戻れるわけでは無く。
都合のいいことしか言っていないのは分かっていた。
でも自分にはそれしかないのだ。
それしか出来ないのだ。
そんなことを考えているうちにどんどん季節が過ぎて行った。
一昨年だっただろうか。
カナエ姉さんが死んだのは。
しのぶから手紙をもらって会いに行ったその日にそんなことを知らされるとは・・・・・。
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作者名:玉葉 | 作成日時:2021年8月25日 18時