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昔話 4-1 ページ9

アメリカでの病院生活はそれほど愉快なものではなかった。 誰もいない1人病室でぼんやりと窓の外を眺めたり、2年後に再会する幼馴染のためのトレーニング研究しかできることがなかった。


着実な治療で確実に発作の回数は減ったが、依然として激しい運動は禁止された。


トレーニングノートを持って病院のベンチに座り、ぼんやりと空を眺めていた時だった。1人の男の子が病院から飛び出した。うっすらと聞こえる言葉に私は視線をその子に奪われた.


"二度と..サッカーができなければ.."



俺は死んだのと同じだ



そう涙ぐんでいた男の子は、病院の後ろに駆けつけた。 私はベンチにトレーニングノートを置いてその子のあとを追った.



膝を揃えてしゃがんだまま頭を下げたその子の隣にサッカーボールがあった。 あちこちに古いことから、この子も絶対守のようにサッカーが大好きな子なんだ。



"ねえ"



"?!誰だ?!"



びっくりした男の子が後ろへ倒れそうになったのを手を伸ばしてやっとつかんだ。
まだ驚きの色がありありと見えるその子は目をぱちくりさせて私をじっと見つめていた. にっこり笑ってその子を立ち直らせ、 サッカーボールを取り上げた.



"サッカー好きなの?"



".……"


"好きなんだ。 ボールがこうなるまでたっぷり練習してきたんだろうね。"



守と初めて会った時のように軽くリフティングした。 胸が少し疼いたがこれくらいは我慢できた。 一瞬、目を輝かせた男の子だったが、顔色はすぐに暗くなった。



"……もうそのボールを蹴ることもできなくなったんだ。 好きだって何の役にも立たない。"



"あきらめるのはまだちょっと早いんじゃない?"



"……お医者さんが言ってたんだ。 足の靭帯と筋肉が深刻に破裂してサッカーはもう…"



視線を降りると、包帯を巻いている橋が目に入った。 くやしそうに握り締めてぶるぶる震えるその姿が昔の私と重なって見えた. 同時にサッカーに対する情熱がこもっている目からは守が見えた。



"..私と一緒に特訓をしよう?"



"……言ったじゃないか。 もうこれ以上サッカーは"



"好きでしょう? サッカー。諦めたくないんでしょう?"



"…"



"私が手伝ってあげる。きっとまたやれるよ"



"…一体どうして…"



"……私はできないから…… "



苦笑いして私はその子の手を引いた

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作者名:バナナ牛乳 | 作成日時:2020年4月2日 1時

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