爆裂と夕暮れ ページ28
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田んぼの中に沈んでいた物をよっこらせと地面に置き、まじまじと見る。
「……地蔵だな」
「地蔵ですね」
「お地蔵さんだね!」
発見したのは、地蔵でした。俺の腰ほどしか__いや、腰"まで"ある中くらいの大きさだ。背中には彼岸花模様の溝が掘ってある。
領域内の地蔵か……怪しいと言ったら怪しいが、壊したらバチが当たりそうで怖いな。
どうしよう。そう思い二人を見ると、二人は同時に口を開き声を出した。
「放っておきましょう」「元の場所に戻してあげよう!」
予想通りの意見に俺は苦笑し、七海は眉間に皺を寄せて「戻すって、どこにです?」と言うと、灰原はさも当然のように愛想の良い笑顔を浮かべる。
「駅の隅っこに何か重い物を置いたような跡があったんだ。大きさ的にもピッタリだし、可哀想だから元の場所に返してあげようよ」
俺たちも元の場所に帰れなくなりそうなのだが、という言葉は飲み込み「灰原らしいな」と代わりに出した。
「よーしっ! じゃ、地蔵を運びますか!!」
*
ゴトンと音を立て、重い石の塊改め地蔵はあるべき場所へと収まった。じりじりと照りつける日差しの中、重い石を運ぶというのは中々酷である。
思いの外時間はかかったのか、空が暗くなり始めていた。地蔵の後ろに延々と続く線路の向こうに日が沈みそうだ。日が沈んだお陰か、少し肌寒い気もする。
「夕焼けこやけで日が暮れて……ってか。良い子の俺たちもそろそろ帰れたらいいんだが」
そう呟いた後にふと気付く。地蔵を運んだのは多く見積もっても30分程度だったこと。何時間田んぼを歩いても真上から動かなかった太陽が地蔵を置いた瞬間に沈み出したこと。
それを疑問とせずに受け入れかけた自分の異常さが恐ろしい。一気に寒気が頭からつま先まで駆け抜ける。
「おい……これ、何か」
そう口を開いた瞬間、踏切なんてものはないのにカンカンカンと頭にガンガン響く音が鳴り、思わず耳を塞ぐと《電車が来ます。黄色い線までお下がりください》と幾重にも重なって不協和音と化している駅のアナウンスが流れた。
鼓膜が破れそうな騒音に、眩暈と吐き気がする。視界が歪み、平衡感覚が狂ってくる。
「二人共!! 一旦ここから離れ__」
そう、後ろを振り返った瞬間。
「………は?」
七海の体は、線路に放り出されていた。__電車は、真横にいる。
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モナカの中の粒あんの中のあずき - この作品面白かってここまで夏休みの宿題もほっぽりだして一気読みしちゃいました!更新楽しみにしてます!! (8月18日 20時) (レス) @page37 id: 5a8fdc6461 (このIDを非表示/違反報告)
ぷっちん(プロフ) - 更新頑張って下さい!応援してます! (5月3日 15時) (レス) id: bdddc4d914 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - まじさいっこー!このすば大好きだからめっちゃ嬉しいです!楽しみにしてます! (2022年6月21日 15時) (レス) @page24 id: ed520dee7f (このIDを非表示/違反報告)
ナチテト@ワイ日本語おかしすぎワロタ - 呪具の名前、 「紅麗主刀」(べにれいかずとう) と、「赤爆勝刀」(あかばくしょうとう)とか、ホントにセンスないのですが、どうですか………? (2022年5月17日 17時) (レス) @page21 id: b29450610e (このIDを非表示/違反報告)
しふぉん(プロフ) - 更新嬉しい…これからも無理なく頑張って下さい! (2022年5月13日 15時) (レス) @page23 id: 9274152077 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シロツメココロ | 作成日時:2022年2月11日 22時