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第56話 ページ18

「宇髄さんのせいじゃありません……」



頼むから、俺にそんなあったかい言葉をかけないで欲しかった。



「俺が戻ったら、皆、きっと殺されちゃう。」



一度喋り出すと、止まらなくなるのが悪い癖で



「俺、もう彼処から逃げられないんです。
そういう家系なんです。それに俺が逃げ出したら、みんながどうなるか分からない。
……俺のせいで誰かが死ぬのは、嫌だ。」


少し震えた声。
今まで見栄張って一つづす積み重ねて来たことが、全部宇髄さんに崩されそうで。
それもいいかななんて弱気になってしまう。



俺は宇髄さんの顔を見れなくて、空を見上げた。
闇に包まれていた空に明かりが差し込んでいて、もうそろそろお別れかななんて思ってしまう。
そもそも、外の空気を吸いたいなんて言った俺が間違いだった。



本当はこうなる事を期待していたのかもしれない。
皆に会いたいなんて、そんなの許されるわけがないのに。



「……お前、そんなこと思っていたのか。いつもいつも、貼り付けていた笑みも、
不死川を突き放した時も……」



宇髄さんは、驚いていた。
違うよ。宇髄さん。俺はそんな善人じゃない。全部全部、自分の為だった。
鬼舞辻から逃れるために、突き放されないように、嘘をついていた。



「俺は、嘘吐きだよ。宇髄さん。だから、もうこれ以上俺に優しさを教えないで。」



ただ強さと、酷い依存を受けていた。優しさなんて事、ずっと知らなかった。
人と鬼の違いが、此処に来てやっとわかった。



辺りはもう光を完全に取り戻していて、俺は呆然としている宇髄さんに向かって、笑った。
それと同時に俺の頬に伝った涙。嗚呼、泣かないと決めていたのに。



俺は座っていた体を起こして、宇髄から数歩距離をとり向かい合った。




「宇髄さん。こんな俺に優しくしてくれて、ありがとうございました。
実弥さんにはごめんなさい、と伝えてください。」



宇髄さんはなにか言おうとしていた。俺に向かって手を伸ばしていた。
だがそれも叶わず、聞きなれた音がした瞬間、気づけば無限城に居て。



「……次はこんな事、しませんよ。」



鳴女さんの言葉に返事をしながら、俺はただ泣いていた。
暗い畳の上に蹲り、声を殺して泣くことしか出来なかった。

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みー - もう夢主が性癖にぶっ刺さってくるぅ!!不死川さーん!!!かっこいいっす!泣きました (2021年9月6日 18時) (レス) id: 6d65fc1765 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - かすみ草とハルジオンさん» とても光栄なお言葉ありがとうございます!嬉しいです!! (2020年4月9日 0時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
かすみ草とハルジオン - 夢主のキャラと言うか性格が好きすぎてヤバいです! 普通に号泣できるぐらい凄いです!((語彙力  こんな凄い作品を読ませてくれてありがとうございます! (2020年3月23日 15時) (レス) id: 36ef626f85 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - √さん» ありがとうございます!嬉しいです!!呼吸の取得おめでとうございます(笑) (2019年12月27日 12時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
- 尊いの呼吸・弍の型 号泣が使えるようになりましたありがとうございます (2019年12月23日 21時) (レス) id: 0e9c842430 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らずぴす x他1人 | 作成日時:2019年9月8日 18時

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