第55話 ページ17
宇髄さんは俺の言葉を聞くなり、太陽のような顔で笑った。
俺にはそれがとても眩しくて、思わず目を細めてしまう。
「A。」
暫く黙り込んでいた宇髄さんが透き通るような声で俺を呼んだ。
俺は反射的に背筋が伸びて、はいと返事をした。
なんかおもしろい。
「……ちゃんと飯食ってるか?」
「何も聞かないんですね。鬼側についた事とか。」
「別に俺はくだらない説教しにお前に会った訳じゃねぇよ。」
俺は少し驚く。確かに宇髄さんらしいや。そう納得して口を開く。
「飯は食ってます。朝昼晩三食。ちなみにデザートもついてきます。」
「まじか。豪華じゃねぇか。」
そう驚いている宇髄さんを横目に俺は夜の闇を見上げた。
全てを飲み込んでしまいそうな深い黒に、
黄金に輝く月。まるでスポットライトのように当たりを照らしていた。
俺は月を見つめながらゆっくりと息を吸った。
「……だからね。俺は大丈夫なんです。宇髄さん。俺は大丈夫、大丈夫。」
なるべく優しい声で自分に諭すように言った言葉は自分でもわかるほど震えていて思わず目を瞑る。
「馬鹿野郎。わかりやすい嘘つくんじゃねぇよ。全然大丈夫じゃねぇだろ。」
宇髄の手が俺の頭に乗る。それがまた煉獄さんと重なって、
同時に実弥さんのことも思い出してしまって体が震える。
宇髄さんはそのまま俺の頭を撫でた。
「辻村A。鬼殺隊闇柱。誰にでも笑顔接し人当たりはそこそこ良い。
柱皆に好かれている人気者。……笑顔の裏に何かあるってことくらい、気づいてた。
此奴は一人で、抱えきれねぇもん背負ってんなって思ってた。
時が経つにつれて、お前の笑顔もだんだん偽物になって、
無理して口角を上げて笑ってんじゃねぇよ。って思ってた。
……気づいてたんだ。……全部。祭りの神舐めんじゃねぇよ。だからよぉ、A。」
────お前がこうなる前に助けてやれなくて、ごめんな。
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みー - もう夢主が性癖にぶっ刺さってくるぅ!!不死川さーん!!!かっこいいっす!泣きました (2021年9月6日 18時) (レス) id: 6d65fc1765 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - かすみ草とハルジオンさん» とても光栄なお言葉ありがとうございます!嬉しいです!! (2020年4月9日 0時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
かすみ草とハルジオン - 夢主のキャラと言うか性格が好きすぎてヤバいです! 普通に号泣できるぐらい凄いです!((語彙力 こんな凄い作品を読ませてくれてありがとうございます! (2020年3月23日 15時) (レス) id: 36ef626f85 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - √さん» ありがとうございます!嬉しいです!!呼吸の取得おめでとうございます(笑) (2019年12月27日 12時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
√ - 尊いの呼吸・弍の型 号泣が使えるようになりましたありがとうございます (2019年12月23日 21時) (レス) id: 0e9c842430 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らずぴす x他1人 | 作成日時:2019年9月8日 18時