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第22話 ページ25

「あ、煉獄さん……」



「嗚呼!煉獄杏寿郎とは俺の事だぞ!」



小さな光に伸ばしたであろう手は煉獄さんに握られていて、上半身を支えられていた。
闇はもう明るさを取り戻していた。



いつもなら苦手に感じる明るさも笑顔も、今はとても安心する。助けられた人達はきっとこんな気持ちだったんだなと思う。握られている手から温かさを感じて、何故か無性に泣きたくなった。



「俺、上弦の鬼と戦って……それで気づいたら意識が……」



どんなに思い出そうとしても、1部だけ記憶がすっぽりと抜けている。
自分の手や口、衣服に着いた返り血から察することが出来た。鬼の呼吸を使ってしまったのか。
俺は終わったとばかりに空を見上げる。怪我がなくて血を浴びていたら流石に不審がられるだろう。



今度こそバレる。俺はぎゅっと目をつぶった。



「よく頑張ったな!偉いぞ!」



だが、俺にかけられた優しい言葉、軽蔑されるであろう瞳には温かい眼差し。頭に置かれたゴツゴツとした手。全てが想像と違うものだった。
思わず目を見開く。



「ありがとうございます……」



そう言って立ち上がろうとすると握られていた煉獄さんの手の力が強まる。
振り向くと、いつもだと想像できない静かな目の煉獄さんが俺を真っ直ぐ見ていた。



何となく、次言われる言葉は分かっていた。



「なあ、A。そろそろ君が抱えているものを俺に話してくれないか?その無傷の身体だって、関係してるんだろう?」



俺の頬に汗が伝う。来ると思っていたその言葉はいつも以上に重く感じるものだった。
どうする、話していいのか。話したらどうなる。ここには居られなくなるのか?
ああ、そうだ。嘘をつけばいい。俺が1番得意じゃないか。



「別に、そんなものないですよ。これはただの返り血です。ご心配ありがとうございます。もう行きましょう。」



そう言って俺は煉獄さんの手を振りほどこうとした。が、強く握られているのでなかなか逃れられない。煉獄さんはただ、胡座をかいて俺を静かに見つめていた。
俺はただどうすることも出来なくてその場に立ちすくむ。陽の光が燃えるように熱かった。



「A。ここに座ってくれ。少し話をしよう。」



俺はその真っ直ぐな瞳に逆らえず、ただそこに座るしかなかった。



どうやったら嘘を突き通せるか。俺の心はそれでいっぱいになっていた。

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らずぴす(プロフ) - 雷雅さん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年8月29日 20時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
雷雅 - 更新頑張ってください! (2019年8月29日 19時) (レス) id: e8ca574508 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - 夜桜さん» ありがとうございます!コメント励みになります! (2019年8月20日 6時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
夜桜 - すごく続きが気になります。 (2019年8月20日 1時) (携帯から) (レス) id: 6b3eeca1de (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - レイラさん» ありがとうございます!! (2019年8月9日 20時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らずぴす | 作成日時:2019年7月22日 21時

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