第15話 ページ18
俺はやっくりと足に力を入れ、鬼に向かって跳躍する。空中で体を捻り斬る体勢に入る。
今の俺の剣は闇すらも切り裂くだろう。
鬼の間合いに入った時、俺は笑った。残念だなあ、お前は俺によって殺されるんだよ。
「えっ、速────」
鬼が俺を捉えた時にはもう既に首を切っていた時だった。
鬼はやがてそのことに気がつくと絶叫した。……煩いな。
「ああああ!なぜ俺は嘘をついて人を喰い続けてしまったんだァ!……俺の大切な人も、俺によって殺された!!」
鬼は、記憶を取り戻したようだった。後悔の叫びが闇に響き渡る。
俺は黙ってそれを聞いていた。同情とかではないが、これを遮るほど俺は狂っていなかった。
やがて鬼は落ち着きを取り戻し、消えていく身体をうっとりと見ながら俺の方を向いた。
今までの鬼にない、優しい目付きだった。
「小僧……嘘は駄目だ。今は上手くやっているようだが、そのうち何もかも崩れ始める。後悔する前にやめろ……」
「何故、わかる。」
その言葉がやけに俺の胸を締め付けた。ただ鬼を殺すということを忘れ、此奴の話を聞いてみたかった。それがなぜなのか分からない。
鬼はゆっくりと目を閉じ、自分に言い聞かせるように行った。
「分かるさ……分かる。俺も偽って生きてきたからな……今じゃなくとも、偽り続けるのはやめろ……本当とことを話した方がいい。」
そう言って鬼は闇に消えた。俺はただその場に立ち尽くすだけだった。
本当のことを話したところで何になる。この嘘だけは絶対に絶対に突き通さなくちゃいけないのに。
だけど
“後悔する前にやめろ……”
その鬼の言葉がやけに頭に響いた。
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らずぴす(プロフ) - 雷雅さん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年8月29日 20時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
雷雅 - 更新頑張ってください! (2019年8月29日 19時) (レス) id: e8ca574508 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - 夜桜さん» ありがとうございます!コメント励みになります! (2019年8月20日 6時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
夜桜 - すごく続きが気になります。 (2019年8月20日 1時) (携帯から) (レス) id: 6b3eeca1de (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(プロフ) - レイラさん» ありがとうございます!! (2019年8月9日 20時) (レス) id: cd5ea6550c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らずぴす | 作成日時:2019年7月22日 21時