8 ページ8
「Aちゃんに胃袋掴まれるかな」
「もし掴められるならわたし相当な腕前ですよね。ドンヒョクさん、舌肥えてそう」
「なにそれ、俺どんなイメージ？」
なんでこんな会話を流れるようにしてるのか、考える暇もなく。
またまた気づかないうちに、わたしが大して上手でもない手料理を振る舞う流れになっていた。この日は確かシチューを作ったんだ。
カレーと同じで誰が作っても美味しくなるようなものなのに、出来上がったシチューを食べるドンヒョクさんは何度もうまいうまいと言って、また彼の普段からは想像できない、今度は無邪気で可愛い顔で笑っていた。
わたしが作ったご飯を美味しそうに食べているドンヒョクさんを見ながら、ここまで流れ着いた経緯を少し振り返ってみる。
最寄駅から家までの道中、この道ちょっと暗いよな、とか、電車内での質問とか、ただの仲良くしてる人の妹なのにここまで気にしてくれるのが正直すごく嬉しくて。
ご飯を食べた後ドンヒョクさんは、今までみたいに「またね」と言って帰って行った。
ドンヒョクさんが帰った後もわたしはずっと彼のことを考えていて、考えることをやめようと思っても無意識に、また頭の中には彼がいる。
たいした会話をしたわけでもないから自分のあまりのちょろさにプライドが勝てずに、なかなか認めるのに時間がかかったけれど、この日、初めてドンヒョクさんに落ちた、と確信したんだ。
この日以来、定期的にドンヒョクさんは家に来てよく夜ご飯を食べるようになった。それだけでなく、たまに彼がレンタルショップで借りた映画のDVDを一緒に見たり、一緒にゲームをしたり。
更にそれで終わらず今度は「大学から近いのいいよな」って言って泊まるようになった。
それでも今みたいに恋人とするような行為をしていたわけではない。彼はソファで寝てたから同じベッドで寝ることもなかった。
その関係に名前をつけるならなんだと聞かれてもわたしにはわからなかった。けれどハユン以外に特に友だちも居らず、一人暮らしを少し心細いと感じていたわたしにとって、誰かに構ってもらえること、本来なら一人でいるはずの家に誰かがいることが本当に嬉しいことだった。
そんな、健全と言えば健全な日々がいつ崩れたかというと、忘れもしないあの日のこと。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1098人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「NCT」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
kria1211(プロフ) - すごい続きが気になる🫣 (2月28日 16時) (
レス) id: 7d440c3a81 (このIDを非表示/違反報告)
名無し12349号(プロフ) - 初めて占いツクールで一気に読み進めるくらいおもしろかったです😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭 (11月18日 20時) (レス) @page25 id: fa94027d31 (このIDを非表示/違反報告)
kai(プロフ) - なさん» ありがとうございます！嬉しいです💖ぼちぼちやっていきますのでこれからもよろしくお願いいたします、、！ (9月22日 0時) (レス) @page21 id: c710896a18 (このIDを非表示/違反報告)
な(プロフ) - 更新嬉しいですありがとうございます🥲これからも楽しみにしてます🫶 (9月21日 22時) (レス) @page15 id: d07f2ca0a8 (このIDを非表示/違反報告)
kai(プロフ) - あわあわさん» お久しぶりです！コメントありがとうございます〜！とっても嬉しいです！遅筆ですがぼちぼちやっていくのでこれからもぜひよろしくお願いいたします…！ (2022年9月22日 4時) (レス) id: a778b97762 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kai | 作成日時：2020年4月19日 6時
