Q.社畜は軍国に来ても働くのか

41枚目 ひまの一言 ページ41

給仕を落ち着かせ、私はドレス直しに別室へと移動する。

取り敢えずと通された部屋は控え室のような作りだ。というか楽屋？メイクのできるドレッサーに、姿鏡と衣装掛け。楽屋か(納得)

ドレス脱ぐか。後ろのチャックには勿論手が回らないので

『コネシマ、手伝って』

コネシマはため息を一つ。

「お前恥じらいとかないんか」
『あると思ってる？』
「あったら漏らすなんてでかい声で言わんわ」

だからその話をいちいち出すな。頼むから広めるのだけはやめろよ。あとでチーノはぶち殺す。

「いま予備のドレス持って来させるわ」
『仕事が早いな』
「当たり前やろ」

コネシマとしてはさっさと会場に戻りたいのだろう。私は戻りたくないが。

「しっかしお前、変わっとるな」
『んぁ？』
「普通、女とかは着てるもん汚されたら怒るやろ。」
『なんでよ』

純粋な疑問をぶつけると、コネシマはいや知らんけどと首を傾げる。

「謝罪させるどころか謝ったし」
『私だって周り見てなかったんだから、そら謝るわ』
「金も受け取らんかったろ」
『お前の周りにいた女共って心狭い奴らばっかだったんだな・・・』

同情するわ。

『いいか、私は自分が悪いと思ったら謝るし、自分に少しでも非があったら相手を責めない』

当たり前だろ。人を責めて時間は巻き戻らない。人を恨んで起きたことは覆らない。

『そんなんガキだって分かる道理だ。何故か大人になったらみんな忘れるけど』
「正論やんなあ」

私の何が面白かったのかコネシマはにんまりと笑みを浮かべる。

「お前、それは世界には肯定されるが、人を殺す言い分やで」
『・・・』

正論は人を殺す。かといって、曲論が人を救うわけじゃない。

『暴論に殺されるよりかは、マシだと思うが』
「せやな」

流したなてめぇ。肯定しないのは勝手だが、人に聞いといて自分は何も言わないが質悪いぞ。

『そういや、めちゃめちゃ突拍子のない質問だが』
「あ？」

暇なので聞いてみる。

『お前ら家族はいるの？』

ここ数ヶ月、住み込みで働いてるのはわかったが誰一人として家族の話題を口に出さない。昔話しも聞いたことがない。

「・・・」

コネシマの瞳から温度が消える。すぅ、と冬の朝のような冷たい空気が流れる。

「他の連中の家族は知らんな。どこにおるかも、何しとるかも聞いとらん」
『ふーん』
「連絡取ってるやつは取っとるんちゃうか」









『コネシマは？』

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