宣言、利己主義者になろうと思います。

73話目 ページ23

「・・っ！！違う！馬鹿じゃないの！？」

尚も否定する。嘘でも記憶があると言ったほうが良かったか？いや、流石にすぐバレるな。

『西園寺』
「離して！貴方そんなに馬鹿になったの！？」
『聞け。お前がもし私をいじめなきゃいけない理由があるなら、構わないから』

勿論、どこかで言ったかもしれないが、私は自分の保身のために人を貶めるやつは気に食わない。同族嫌悪とでも言おうか。

だけど

『お前の理由は、誰かの為だろ』

私が出来なかったことを。彼女が成し遂げたことを、羨ましいと思う。尊敬する。

なんでそう思ったか？簡単だよ。西園寺が私をいじめる時、そらむかつく事もたくさんあったけど、彼女はまるで切羽詰まったような目をする。

煽っただけであそこまで過剰反応するのは小学生か焦ってるかのどちらかだろう。

『西園寺』
「違うわよ！違う！勝手なことを、何も知らないくせに、忘れたくせに」
『お前は誰かの為に動く。じゃあ、お前の為に誰が動いてくれるの？』
「・・それ、は」

ヒーローは皆を助けてくれる英雄だ。なら英雄は、ヒーローは、誰の助けもいらないと？

違うだろ。必要だろ。

「ふ、ふふ。違う。本当に勝手なこと言わないで。私は貴方が気に食わないのよ」
『・・・』

さっきまでの勢いはなくなり、だけどそれでも否定する。そうせざるを得ないなにかあるのか、単に私の勘違いか。

なら最後のチャンスだ。

『・・ふぅん、そう。そうか。じゃ、私の勘違いな。本当に胸糞悪いねお前』

彼女の手を掴み、私の手のひらに指を押し付ける。

『本当に、お前は、自分の意志なんだな』

掴めよ。頼むから。私にお前を助けさせて。お前みたいな人間を、私は二度も見捨てたくない。

自分勝手なお願いを、優しい君なら掬ってくれるでしょう。

「勿論」

彼女の指が動く。書いた文字は四文字だ。彼女の涙が動く。はらはらと、私達の手に伝い、床に落ちる。

「(おねがい)」
『うん』

彼女は嗚咽を漏らさないよう、ただ涙だけを流す。

「(わたしたちを、たすけて)」
『・・うん』

堪えきれなかったか、耐えきれなかったか、彼女の体は壁にもたれかかりゆっくりと沈んでいく。

唯一上に上がってる彼女の手の平に、今度は私が文字を書く。

『(かならず)』

この身体が世話になったんだから、主人格の、死んだ彼女の友人だったのだから

恩は返すよ。必ず。

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