69話目 ページ19
旧友の片割れで、旧友の本性で、旧友とは違う彼女は全てを知り、全てを聞き、いま眼前に座っている。
彼女は、キョウカは、手元にあるオレンジジュースを煽る。
『・・甘い』
吐き捨てるようにつぶやく彼女。
kr「何が？」
それはまるで、久しぶりにあったあの時と似ていて。
だけど言う言葉は、まるで正反対で。
『趣味いいねぇ、わからないの？』
先程、頷いていただけの彼女とは打って変わり、饒舌に話し始める。その表情は、晴れやかだ。
『甘くて、甘ったるくて、どうしょうもないくらい、舌に残る』
叫ぶような声。強気な言葉。前世のこの子には、まるで思いもよらなかった姿だ。
死ぬことを受け入れ死んでいった彼女は、今。生きることに必死にもがき、苦しもうとしてる。楽しもうとしてる。
kr「君は、キョウカ。君は後悔してる？」
『してる』
顔を下げて、本当に悔しそうに顔を歪める。
『彼女がしたことに、私がしたことに、今だって不安だ。今だって怖い。今だって、やり直したい』
だけど、と顔を上げる。その姿は、仲間と笑いあっていた彼女によく似ていて。
『だがそう思うことの何が悪い？』
放つ言葉は、決して彼女が言わないであろう言葉で。
kr「何も悪くないさ」
狐面は答える。何故なら、今のキョウカにとって彼は先生だから。暗く寂しく冷たい牢獄で、唯一質問し、答えた間柄だから。
kr「君は何も悪くない、そう答えれば満足するかな」
『大満足だよ。満点』
kr「いつの間に関係変わったんだ」
楽しげに笑う二人。
kr「僕の薬は、役に立ちそうか？」
『さてね』
kr「君は彼ら全員の記憶を呼び戻すかい？」
『さぁ』
白衣の男は彼女の思いも考えもすべてわかる。しかし、目の前のキョウカの考えは何もわからない。
kr「もし全ての記憶を思い出させたら、彼らがどうなるか想像がつかない君じゃない。」
『・・・』
kr「そうなったらどうする？」
『そのときは生きてやるよ』
kr「まるであの時と正反対だね」
『当たり前だ。泣きながら、みっともなくね』
キョウカは空になったコップを差し出し、お代わりを要求し、椅子に座ったままだ。
『楽しみにしててよ、先生』
kr「・・はは、そこだけは同じなんだ」
行動も言葉も思想も考えも何もかも正反対で、一つの身体を共有し、一つの目標を二人で分け合い協力する彼女たち。
kr「全く、いい観察対象ですよ。君たちは」
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レス) @page9 id: 5aa1bb0c09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：碧月
| 作成日時：2020年1月24日 16時
