二匹目 〃 ページ17
頬に当てた手。そこに涙が伝わる。ぽろぽろぽろぽろと、目玉が溶けるんじゃないかくらいに赤い瞳は涙を流す。
『?』
tn「ほ、ほんま?俺の目、きれいなん?」
『宝石以上だね。私は長い間生きていたけど、ここまで綺麗なものは見たことがない』
少年は嬉しがるのでも恥ずかしがるのでもなく、ただ涙を流す。
tn「嘘や」
『は?』
褒め言葉で喜んで涙を流したのかと思ったんだが、違うか。
tn「んなわけないやん。だって俺のこれは、災なんよ。呪いで、忌されるもので、異常の筈や」
言葉に私が吹き出すと、彼は目をまんまるにしておどろく。いやごめんごめん。だってまさか
『呪い?災い?忌?まだそんなもん信じてんのか村の連中は!!』
昔から何も変わってない。愚かで馬鹿な人間共だ。猿から進化しきってないんじゃないかと疑うレベルだ。
『よく聞け少年。そんなもの全てまやかしだ。君のその瞳は変異であって異常じゃない。』
tn「異常やない・・」
『むしろ異常なのは、村人だ』
綺麗なものを異質と捉える、異常だろう。彼らは受け止められないんだ、新しいものを。
『なぁ少年。私の元に来ないか?』
tn「へ?」
『君に今必要なのは人の作った常識じゃない。誰にも介入されない、確固たる自己だ』
古い友人のようなことを言ってしまう。戦争が大好きなあいつは今頃何をしているのだろうか。
tn「じ、こ?」
『そう。自分のことだよ。』
とんっと少年の胸に手を当てる。心臓が拍動してるだけでは生きてるとは言えない。ただの人形だ。
『私のもとにきて、それをゆっくりと作り上げなさい。君はもう捨てられたんだから、君はもう自由なのだから』
おいで、と手を差し伸べる。彼は私を見上げ、ぎゅうっと目をつぶる。
tn「お、俺なんて拾っても、美味しくない・・」
『流石に私も人の子は食べない・・』
まさか人肉するとか言われてんの?は?食ったことねぇよ?森の中にある人骨は行き倒れの人間だよ?
『それとも、魔女の手は取れないか』
tn「いや、そんなわけじゃ!」
慌てて手を掴む。その様子が面白くて思わず笑ってしまう。
『君の名は・・ああ、いや、いいか』
彼の目線にしゃがみ、後頭部に手を添えて額をくっつける。
『いままでの名を捨てなさい。豚の魔女のもとに来るなら名はトントンだね』
tn「トントン・・」
少年は何度も何度もそれを口に出して、嬉しそうに胸に手を当てる。
tn「ありがとう、魔女様」
『魔女様ってやだな』
tn「・・ご主人?」
『あぁそれいいわ』
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まうるもち - 好きです....文章が神.....いつの間にか読み終えていた不思議 (2019年10月7日 23時) (レス) id: a48c43d4d7 (このIDを非表示/違反報告)
碧月(プロフ) - 紫龍さん» 誤字ですごめんなさい!ご指摘ありがとうございます! (2019年10月3日 6時) (レス) id: 8ab1994adc (このIDを非表示/違反報告)
紫龍 - 碧月さん» 失礼します…knさんの2条目『後者裏』って『校舎裏』の事ですか?誤字とかじゃなかったらすみません!! (2019年10月2日 23時) (レス) id: ed1de518a2 (このIDを非表示/違反報告)
碧月(プロフ) - アルムさん» ご指摘ありがとうございます! (2019年9月29日 9時) (レス) id: 8ab1994adc (このIDを非表示/違反報告)
アルム(プロフ) - コメント失礼します!碧月さんの作った小説はやっぱ神ですね!途中で気づきましたがemさんの小説の六限目の20行目の「…そらは愛おしさへと…」は「…それは愛おしさへと…」じゃないでしょうか?間違ってたらすみません!更新楽しみにしています。 (2019年9月29日 8時) (レス) id: 9866a4ca3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:碧月 | 作成日時:2019年9月17日 6時