甘さ控えめに【橙】 (ページ19)

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モヤモヤしたまま職場を出ると生憎の雨

天気予報なんて見なかったから、傘なんて持っておらず駅まで走って向かった。

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最寄り駅に着いた頃には雨は少しだけ収まってたけど、それでもずっと地面を叩いてた。

少し寒いけど雨が止むまでここに居ようかな

「寒くない？平気？」

そう思ってた矢先

ふわっと回されたマフラー

優しい匂いは、私の好きな香り

『海斗くん…？』

「傘無いの？」

『あ、うん、天気予報見てなくて』

「じゃあ、尚更一緒に帰んないとだね」

『わっ、ちょっ…！』

手を取ると紫の花を咲かせ雨の中へ繰り出した。

今日もまた偶然、再会することが出来た。

海斗くんのことが好きだから、

大好きで堪らないから

このまま好きな気持ちだけでいたい。

恋は盲目、なんて言うんだからこんな臆病な気持ちなんてきえてしまえ

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ひとつの傘を2人で分け合い、海斗くんが傘を持ってくれて濡れないようにくっ付き合った。

雨なんて嫌いだけど、こうして海斗くんと触れ合えるのならいいかもしれない。

結構好きかも

「Aちゃん今日お家行っていい？」

『…え、なんで』

「一緒に居たいの。だめ？」

…あ～もう！かわいい！

ダメって言えず、頷いてしまえば余計近づく距離

やったー、Aちゃんのご飯食べれるーって喜んで、言葉ひとつ、表情で掻き消されてく。幸せで満たされる。

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玄関へ入るや否や後ろから突然抱きしめられる。

「会いたかった…、Aちゃんに触れたかった」

弱々しいそんな声で私を抱き寄せて、

少し力強い腕が心地良かったり、

「……ごめん、今だけ甘いていい？」

うん、と頷く前に私の吐息は彼に奪われてた。

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