甘さ控えめに【橙】 (ページ15)

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松倉side

「えー…本当のこと伝えてないの？」

「言ったら引かれるかなって」

最初はよく見かける人。

可愛らしいなー、ってそんな風に思ってた。

時たま見かけてた笑顔に惚れてたのは自覚していて、朝電車に乗る度会えるかどうか楽しみだった。

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今は彼女として近くにいることが嬉しくて、

恋が実ったことに浮かれてた。

けれど、自分がアイドルで普通のカップルのように外でデートしたり、堂々と手を繋ぐことでさえ出来ないということを酷く悔しいと思った。

「なんで言わなかったの？」

「言うタイミングが無かったというか…」

「普通に伝えたらいいじゃん」

「なんか自慢ってか、嫌な風に感じない？」

「んー……タイミング見計らって言ってみたら？Aちゃん不安に感じるだろうし」

Aちゃんが不安に感じてるのは何となく分かってた。

女の子なら、いや、俺だって普通にデートしたいし、でも、やっぱり世間体を気にしてしまう。

「難しいもんね」

「手繋いでデートしてみたい」

「そういうのとかきちんと伝えたがいいと思うよ」

「ちゃかまじありがとう、今日伝えてみる」

早速メールを送ってみればすぐに既読がつき可愛らしいスタンプが送られてきた。

思わず頬が緩むと気持ち悪ぅ、って悪態をつかれたのは少し悲しい。

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撮影が早く終わり、急いで駅へ向かう。

この前みたいに寒い中待たせてこのご時世だし風邪をひかれたら困る。

駅へ向かうとAちゃんはあの改札口にいて、俺に気付くとふわりと笑った。

『お仕事おつかれさま』

「Aちゃんも」

『どうする？電車乗る？』

「ううん、歩こ」

Aちゃんの袖口をとり駅を出た。

きちんと気持ちを伝えよう。

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