fragrance

東大王の卒業 ページ17

「拓司！拓司！」

玄関のドアを開け全力で拓司の元へと向かう。

私の叫び声にうるさいなぁと顔をゆがめた。

「今日は何の日！！」

「今日？ なんかあったっけ 」

「水曜だよ！！3/20だよ？なんか思い浮かばない？」

「上野動物園開演日？」

「それは知らない」

「あ、そうじゃあなんの日」

私のだるいテンションに呆れたのかパソコンに向かう拓司の横に座って目を塞ぐ。

「ちょ、何」

「目瞑ってて、見ちゃダメだからね？」

大人しく自分の手で目を塞ぐ拓司。

その間にバックの中をガサゴソと漁る。

「ねぇもういい？早く仕事したいんだけど」

「冷たいなぁ、彼女より仕事？」

「うん笑 」

「おい」

本当は私のこと大好きだって知ってる

「目開けていいよ」

私の手には小さなブーケサイズの花束と、紙袋。

「東大王、卒業おめでとう！！」

そうやって微笑んで花束を渡すと

「おお」

と目をぱちくりさせながら驚いた。

そう、その顔が見たかった。

「ちゃんと祝いたいなって思って。
おめでとうじゃないかもしれないけど」

「ただ、こう言うのって男がやるんじゃ……」

「うるさい。女はサプライズとプレゼントが好きな生き物なの、これで終わりじゃないし。」

まだあるの？と見つめてくる。

「はい」

と紙袋を渡すと中を見て目を輝かせた。

「え、これ俺が欲しかったやつ」

実は前ショッピングした時に目に止まっていたバックをプレゼントした。

わーすげぇとバックを見ている時急に彼の動きが止まった。

「ねぇ、これは何？」

そう言って取り出したのは1枚の封筒だった。

「いや、日頃の感謝伝えたくて書いただけ、
後で見て！今見られると恥ずかしいから…」

書いた内容を思い出して恥ずかしくなって俯く。

するとありがとう、と拓司が優しく私を引き寄せる。

「収録で俺が思ったような事が出来なくても家に帰ったらAがいて暖かく包んでくれて俺本当に助かった。Aがいたからここまで来れたんだよ」

「拓司の心安らぐ場所になれたらいいなって思ってたから凄く嬉しい。最近冷たいけどこうやって言葉にしてくれる拓司が大好きだよ」

そうやって目を見つめて言うと、恥ずかしそうに笑って鼻をかいた。

「照れてやがんの」

「そんなこと言っていいの？さっきの手紙音読しようかな〜」

「それはダメ！！拓司のバカ！」

「バカじゃないし〜」

そうやって2人でふざけあって笑い合う時間がかけがえのないものなんだ。

拓司、卒業おめでとう。

恋慕 izw→←17 izw

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す