【僕のヒーローアカデミア】命懸け少年 Part4 (ページ15)

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美しさとは罪であるページ15

死合は視線に気付いていないようだった。それとも、気にかける程でも無いという意思表示だろうか。彼の世界では死柄木がすべてで、その他有象無象からどんな感情を向けられてもどうでもいいということだろうか。

俺は嫌悪感を抱いた。それはヒーローとしてか。いや、通形ミリオとしてかもしれない。

何故なら俺は、俺がその目にどうでもいいものとして映されているのにどうしようもなく腹が立ったからだ。

美しい、そう感じてしまった。その目はブラックホールだ。透過するこの身体さえも引き込むほどに強大な。

｢…廻輪｣

変化してしまった俺の視線に気付いたのは隣にいた子だった。睨みつけられる。まるで、死合に彼が惚れ込んでいるかのように。

何だ、わからない。奴の周りはどうなっているのだ。死合は絶対悪じゃないのか。自分達の脅威じゃ無いのか。

何故、君はそんな愛を含む目を死合に向ける？

名前を呼んだ子は、確か体育祭で一年の二位の子だったか…それ程までに力量のある人材を手玉に取っているのか。

死合はそこで、初めて人間らしい動きを見せた。ゆっくりと彼の方を向いた。

｢なぁに？｣

その声はその場の誰しもの脳内に刺さった。先程まで嫌悪の目で彼を見ていた光の世界(ヒーロー)の卵達は俺同様に引き込まれた。

それほどに、死合は美しさを持っていた。

今まで聞いていた噂を否定したく思うしまうほどに混乱した。

この子を敵にしたくない。敵の手に渡したくない。
恐ろしい。これは魅了だ。個性によるものじゃなきゃ信じられない。でも、死合の個性は身体強化だとわかっている。もう訳が分からない。いやわかる。これは、彼自身の力によるものなのだ。末恐ろしい。こんな人間が存在していいものか。この子の力は強過ぎる。

その目を向けられた隣の男は優越に満ちた表情をしていた。今この世界でたった一人死合に意識を向けられているからだろう。

俺は違う。気を確かにしろ。そいつは悪人のはずなんだ。火のないところに煙は立たない。タチの悪過ぎる噂は本物であるはずなんだ。

そうじゃないと恐ろしい。
恐ろしい事を世界は死合にさせている。

この子はこの光の世界の唯一の闇だ。いずれこの子を中心に世界は歪むだろう。

だから紅白頭君が死合に擦り寄った時見せた慈愛溢れる笑顔に酷く怯えた。

その顔に裏があるなんて思えなくて頭を抱えた。彼が罪の無い純粋な子供だと確信してしまった。

その美しさは、この世界をも魅了してしまったのだ。