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場所は璃月海上──船の上。「南十字」武装戦隊という、七星の許可を得た武装集団らしい。所謂幕府軍のようなものだろう。
彼──楓原万葉は「南十字」に身を寄せており、放浪者として楽しく過ごしている、と説明してくれた。
「しかし、本当によかったのか？ 万葉。そいつはいいとこのお嬢さんだろ、ウチの船に耐えられるのか？」
「構わぬ、拙者と共にいることを選んでくれた彼女をここで拒絶したりはせんよ。それに、もう二度と失うのはごめんであるからな」
「ん、そうか。アンタがそういうなら、アタシもいいぜ。なに、ウチは船内恋愛大歓迎だからな！ はっはっはっは！」
豪快に笑うこちらのお姉様が、「南十字」の頭領──北斗様。快活でお元気で素敵な方だ。戦闘の腕も立つのだという、船員が信頼して当然だろう。
万葉は私の手を取って、隣に立つ。それから安心したように微笑んで、また私を抱きしめた。
「お主が生きてくれていて、本当に安心したでござる。Aも居なくなっていたら、どうなっていたことか……」
「どうして、約束してくれたじゃない。戻ってきて、婚約を申し込んでくれるって。万葉は約束を破るような人じゃないもの、何年だって待つわ」
「そう言うと思っていた。だが……すこし心配していたでござる。ほかの男と結納を済ましているかもしれぬ、と。そのときは……相手方を生かせているかどうかもわからぬ。Aがそのままでいてくれて、本当に良かった」
それを言われて、私は間違ったことをしていなかったのだと思いほっとした。
当然だろう、彼は大切な親友を奪われたのだ……そこからまた、さらに何かが失われるようなことがあっては彼を更に傷つけてしまう。
「私だって貴方と同じで、約束はちゃんと守る女よ。万葉が辛かったの、私知ってるもの。だから、あなたを傷つけるなんて、できやしないわ」
「そうで、ござるか」
万葉が優しく微笑んだ。その表情を見れば、自然とこちらの頬も緩んでしまうというものだ。私は幸せな気持ちのまま、彼を見つめる。
「故郷はもういいでござるな？」
「必要ないわ。万葉と共にいられるなら、故郷も両親も友達もどうでもいいの」
「心配は無用であったな」
嬉しそうに笑った顔が愛おしい。そっと手を伸ばして頬に触れると、彼は手のひらに口付けを落とした。
顔に熱が集まる。でも、彼から目線を外すことは出来なかった。
「拙者から櫛を送るでござる。ずっと共にいよう、A」
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