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(11) ちゃんと収めて、見て凪いで。--Amber ページ36

パシャリ。シャッター音が鳴って、時間の1部を切り取った。僕はこの一瞬を切り取るのが好きで、慣れない労働をしたのだと思い出す。
フォンテーヌで開発された写真機を持っている人は少ない。きっと、各国の富豪位のものだろう。そんな中で平民である僕がこれを持っているのは、極めて珍しい事だった。
そして、この写真機を使って、仕事をしていることも。
僕は生まれ育った自由の国で、一瞬を切り取る「写真家」の仕事をしている。もちろん人がいないから、写真家と言えば僕しかいないし、依頼の数は1週間に2桁を超える。
内容はもちろん様々で、誕生日とか、就職祝いとか、退職祝いとか。そういう記念日の日に僕は呼ばれて、大切な時間を1枚に収めるのだ。
今日僕は、仕事も無いのにシャッターを切っていた。僕の趣味は仕事と言っても過言じゃない。だから、休みの日でも写真を撮る。

「ねぇA、また私を撮ったの?」

被写体は振り返ってそういった。彼女──アンバーは不服そうな表情を浮かべて、風の翼をしまっている。
僕は悪戯っぽく笑いながら、彼女に問いかける。

「いけなかった? 君はとても絵になるから、その一瞬を収めておきたいんだけど」
「……別に構わないけど」

アンバーは少し照れくさそうにして、そっぽを向いた。こういう所が可愛いと思う。1か月前、僕は3年の片思いを経て想いを伝え、成就したわけだけど……うん、本当に可愛いと思う。
彼女の事になると、言葉を失うって本当なんだなぁ。
それからしばらくして、アンバーは思いついたような表情をしてから、顔を近づけてきた。おぁ、近い……。

「ねぇA、私だけじゃなくて、私とエウルアをセットで撮ってよ!」
「それは依頼? それともおねだり?」
「おねだり!」
「しょうがないなぁ。撮ってあげるよ」

あまりにも可愛く言うものだから、ついつい了承してしまう。ローレンスにいいイメージはなかったけど、アンバーの友人を紹介されてからは少しイメージが変わったんだっけ。
まぁ、ローレンスのイメージが変わったと言うよりかは……「エウルア」という人間のイメージが変わっただけな気がする。相変わらず旧貴族の横柄さは目も当てられないからね。

「アンバー、今から撮るつもり?」

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設定タグ:原神 , 短編集 , 恋愛   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:ハル@雪割桜 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年2月3日 1時

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