検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:35,210 hit

ページ ページ12

うん、なぜ忘れていたのだろうな。私もよくわからん。なにか術をかけられていたのでは無いだろうか、と思考する。しかし未だに何も思い出せない。


「……魈様、私、記憶力は良い方なのですが」

「あぁ、そうだな。貴様は賢い童だった」

「なぜこの契約と、貴方への思いを忘れていたのかが腑に落ちないのですが」

「そこが気になるか? もう何百年の前のことであれば、忘れてしまうのも無理もないだろう」


でも魈様は覚えていただろう。その違いがよく分からない……。私はさらに首を傾げる羽目になった。これでは振り出しに戻ったも同然だ。
私がうんうん唸っていると、魈様が鼻でふっと笑った。笑うな。


「記憶に靄をかける術のことは知っているか?」

「あぁ……どなたかが好きそうな、都合の良さそうな術のことですね。覚えています」

「それを我が貴様に使った」


何故!? 危うく掴みかかりそうになった。ならないわけが無いだろう。人の記憶を勝手に忘れさせておいて、一体何がしたいんだ……いや、待てよ。
先程の契約……私が忘れたら、などとほざいていたな。


「魈様、もしかして私を仙境へ戻すおつもりですか!?」

「……ふん、察しが悪いやつめ。昔から我の感情に対して鈍感であったな、変わっていなくて結構」

「今は昔話をしている最中ではないでしょう! 私にはやるべき仕事が沢山残っています故、仙境に戻ることは……っん!?」


2度目の口付け。此度は長めだ。なぜ私がこんな目に遭わねばならないのか……。魈様が満足気にしている理由も、仙境に戻そうとする理由もわからない。納得しないで俗世から離れるのは勘弁願いたいのだが。
魈様は私から離れると、少し怒ったような表情を見せた。そして私の頬に触れる。


「我は貴様を手中におさめたいだけだ。それ以上でも、それ以下でもない。こんな面倒な術を使ったのも、確実に貴様を我のものにするためだ」

「……何故、でしょう」


聞き返せば、彼ははぁとため息をついた。すみませんね鈍感で。どうも人の気持ちを察するのが苦手なようでして。
だから友人は少ないのだが。


「Aが好きだからだ」


……? …………。
何を言われたのか理解できなかった。それも一瞬だったが。
好き。魈様が。私を。初恋の人が、私のことを、好いていてくれている。
これが……奇跡か……?


「ありがとうございます、魈様……」

「返事は」

「っ……。お慕い申しております、魈様」

肆 別れは一人で告げるべきではない--Zhongli→←前ページ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (55 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
179人がお気に入り
設定タグ:原神 , 短編集 , 恋愛   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ハル@雪割桜 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年2月3日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。