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仮に、この家を抜け出せたとしても、身分を証明するものが無ければ、仕事とか、ましてや大学なんて
「無理でしょうなぁ」
ハハッと、夢の国に生息しているネズミみたいな笑い声が出る。
持っている服を、竿にかけ、洗濯バサミでハサミを挟む。
ため息が出る。
「さっきの笑い声、最高にキモかったぜ」
「私もそう思うよ、キルア」
背後から声をかけてくるキルア。
気配がないのはもう慣れた。こんなことで驚いていては、この家で生活なんて出来ない。
「どうしたの?」
「ちょっとからかいに来たってとこ」
キルアは心底楽しそうな笑顔をこちらへ向ける。
それを見て、主人へイタズラをしようとしている猫を思い出す。キルアは猫目だから余計に。
「え?手伝ってくれる?ありがとー」
わざとふざけて、洗濯物を押し付ける。
キルアは「んなこといってねーよ!」と言いつつも、シワを伸ばしてくれる。いい子だ。
「それで、何が無理なんだ?」
「いやね、この世界ね私の身分証明書ってどうなってるんだろうって」
それを聞いてキルアは「しょーもない悩みだな」と呟く。
「なんだ、好きなやつでも出来たのかと思ってたのに」
その言葉に、心臓が口から出そうになる。
もちろん、あの後イルミと普通に買い物して終わったけど、あの時のイルミを私はまだ引きづっている。
「なんでさ」
焦りを隠しつつ、会話を進める。
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作者名:名無し37351号 | 作成日時:2017年4月1日 23時