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久々の日本食に夢中になってしまい、気づいたらご飯を3杯もおかわりしてしまった。
お米超うめぇ。最高。
そんな私を疎むことなく、逆に嬉しそうにご飯を装いでくれた薫さん。
「すみません、がつついてしまって」
「いやぁ、良いわね、若いって」
見ていて気持ちいいぐらいの食べっぷりだったわ、と母性に満ち溢れた笑顔で薫さんは答えてくれた。
「さぁ、歯磨きして今夜はお休みなさい。疲れたでしょう?」
なんだろう、この、おばあちゃんみたいな感覚。
いや年齢的には最早ひいおばあちゃんでも全然良いぐらいなんだけど、如何せん見た目が若すぎる。
実年齢と見た目が釣り合ってないから違和感がある。
友人におばあちゃんみたいな性格の子がいるけど、その子もやはりまだまだ同い年で、薫さんみたいな余裕はなかった。
これが本物かぁ…。なんの?ってなるけど。
洗面所に入り、用意されていた歯ブラシに歯磨き粉を付けて口に突っ込む。
本当に広いなこの部屋。
初めてゾルディック家の私の部屋に案内された時もこんな感じだった。
鏡に映る自分と目を合わせる。
一瞬、ほんの一瞬、この世界に迷い込んだ時の私が鏡の向こう側に立っていた気がした。
不安だらけだったけど、今はなんとか生きてるよ。大抵の問題は時間が解決してくれるから、無理しない程度に頑張って。
過去の自分にメッセージを送る。
ちょっとクサイかな。でもたまにはいいよね。
今までよく頑張ったよ私。
全部終わったらイルミに美味しいもの食べに連れて行ってもらおうね。
この前雑誌で見つけたイルミが好きそうなお店に連れて行ってもらおう。
だから、だからあと少し頑張ろうね。
洗面所のドア越しに薫さんが皿を洗う音が聞こえてくる。
口をゆすいで直ぐに彼女の元へ行く。
彼女の背中は実家でよく見ていた母のそれによく似ていて。
「手伝いますよ」
「あら、いいのよ。部屋に帰っておやすみなさい」
薫さんはにぃと口角を上げて肘で私をつつく。
「いえいえ、手伝わしてください」
今はもう出来ない親孝行の真似事がしたいのです。
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作者名:名無し37351号 | 作成日時:2017年4月1日 23時