事勿れ主義【イルミ】 (ページ18)

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｢是非！｣
考える間もなく答える。
チューマット大学は心理学、倫理学の分野において世界トップレベルの学校だ。
それに時代はかなり違えど同じ境遇の人と出会えたことが嬉しい。
｢ふふ、ありがとう。さ、お風呂を用意するからちょっとお休みなさい｣
｢なにからなにまでありがとうございます｣
私は深々と頭を下げる。
本当に感謝しかない。
窓際に立ち外の様子を眺める。
快晴だ。清々しいぐらい。
今何時だろう。14時ぐらいかな。
日が登ってるうちからお風呂なんて贅沢だなぁ。
｢用意出来たわよ｣
背後から薫さんの声が聞こえる。
軽く礼をして脱衣所に入る。
鏡を見て髪が伸びたことに気づく。
この世界に来てからもう1年と少し。
月日の早さに少し驚く。
体を洗い、湯船に浸かる。
今、私の友達は何してるんだろう？
お兄ちゃんは彼女と結婚したのかな？
もしこのまま薫さんに着いていって、ゾルディック家を離れたらあの家はどうなるのだろう。
カルトは泣いちゃうかな。
ミルキは…うん、大丈夫。
キルアはゴンがいるから大丈夫。
イルミは…イルミは寂しいと思ってくれるのかな。
この世界に来てから彼と過ごした時間が大半だった。
私は離れちゃったら寂しいんだけどなぁ…。
頭を振り考えを吹き飛ばす。
やめよう。折角ゾルディック家を出ることが出来るかもしれないのに。
湯船から上がり、体と髪を拭いていく。
あぁ眠たい。
久しぶりの湯船に体が温まっていく。
脱衣所に用意されていた服を着る。
着たらわかる、良いやつやん。
ドライヤーの電源を付けて髪を乾かす。
本当に薫さんには頭が上がらない。
ヒソカの他に薫さんの分の菓子折も用意しなくては。
脳に霧がかかっているような感覚で脱衣所から出ると、味噌汁の香りが鼻腔を襲う。
｢ご飯用意したわよ｣
割烹着を身につけた薫さん。
本当にキツネみたいな笑顔で可愛い。
ご飯の香りが脳内の霧を晴らしていく。
もう薫さんには足を向けて寝ることは出来ないなぁ。