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彼女は上機嫌で、そりゃもうにっこにこで私の前に立つ。
「凄いわ、満点よ!」
おっとまじか。
いやありえない話ではない。
私はこの1年、大学入試のために勉強してきたんだし。
でも小学以来満点なんてとったことなかったからちょっと嬉しい。だいぶ嬉しい。
「嬉しいわ。日本語ができる人に出会えただけでも嬉しいのに、満点なんて」
そうだ、すっかり忘れていたけどこのテストは全て日本語だった。
それに彼女は何者?
この世界の共通語はハンター語だし、この1年日本語どころか他の言語を見たことがなかった。
「どこでこの言葉を?ジャポンは今鎖国状態よね?」
好奇心に満ち溢れた目をして尋ねてくる。
「母国語です」
「母国語?出身はジャポン?」
「いや、ジャポンじゃなくて日本です」
日本という単語は聞いた途端、彼女の動きが止まる。
「あなた、今日本って言った?」
「え、はい」
なんか不味いこと言ったかな…。
でも事実だし。
「英語は?」
「学校で勉強しました」
しばらくの沈黙。
気まづくなって彼女の顔を見上げると、ほろほろと涙を流していた。
「え…?大丈夫ですか…?」
「やっと出会えた…」
そう言って私の両手を握りしめる。
「ずっとずっと探していた…もうダメかもしれないって思っていた…」
握る力が強くなる。
困惑する私を他所にしゃべり続ける彼女。
彼女はしっかり私の目を見ていて、私も視線を逸らせずにいる。
綺麗だなぁなんて呑気なことを考えてしまう。
「あなたも同じ。現実世界からこの世界へトリップした人間なのね」
私の困惑度合いはピークを迎えた。
え?今なんておっしゃいました?
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作者名:名無し37351号 | 作成日時:2017年4月1日 23時