事勿れ主義【イルミ】 (ページ1)

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49 イルミside ページ1

『どうかしましたか？』
脳内で、あの夢が再生される。
そう、思い出した。つい先日見たあの夢を。
桜吹雪の中、立っていたあの女は、Aだったんだ。
あの時、既視感を覚えたのは、とっくの昔に本人と知り合っていたからだ。
化粧をしているAは、普段の印象とはまた違い、素直に綺麗だと思った。
「A」
君だったんだね、という言葉を飲み込む。
Aは俺の夢を知らないし、たまたま、化粧をした彼女が出てきただけだ。
「なんでもない」と誤魔化す。
『まぁ、女は私だけどね』
『私がこの世界へこなかった場合のだけど』
『この世界線の私は不幸だよね』
あの時の声が、頭を支配する。
いつの間にか、俺達は昼食のため、フードコートに入っていた。
美味しそうにカレーを頬張る彼女をみて、落ち着く。
同時に色々な疑問が出てきた。
もし、あの夢が何かしらのサインだとしたら？
彼女の話に相槌を打ちつつ、頭を整理していく。
まず、あの夢に出てくる女性はAで間違いない。
そして、彼女は『あの夢は未来の話』だと言っていた。
つまり、あのAは18より上、おそらく俺と同じぐらい。
次に、『この世界』と『この世界線』の二つの単語。
これらの意味がわからない。
『この』という表現から、今俺達が生活している世界以外にも『違う世界』、『違う世界線』が存在するってこと？そんなこと
「ありえない」
「え、キルアとカルトが喧嘩したことですか？」
「それはありうる」
つい、考えていることを口にしてしまった。
「ですよね」と、返してくるA。
そもそも、Aは何者なんだろうか。
記憶が無いという割には、結構、物事を知っているし、今日だってこういう場で遊び慣れている様子だ。
記憶が無い者は、『楽しい』と感じても、『楽しい』という感情を知らないのだから、どう表現したらいいのかわからない。
故に、感情がない。もとい、表現が出来ないためロボットのようになる。
それなのに、彼女は最初から感情があったし、表現もしていた。
何か隠している？
そう問いたかったけど、そうすると大切な何かが壊れそうで、俺は口を継ぐんだ。