一人の夜 ページ21
虫の音が聞こえてきた。
縁側に座り、ぼんやりと月を眺める。
かつての世界は、無機質で無粋な作り物の光が夜空の星をかき消していた。
この時代に見る夜空は、空を埋め尽くす満点の星空というのふさわしい光景だった。
貴女「………」
ギィ、と足音がした。そちらを見ることもなく、目の前の景色に視線を向けたまま、ぽつりと呟いた。
貴女「……五年生が何のようだ」
.
.
［NO side］
「その怪我はどうした」
貴女「お前に話す必要あるか？何だっていいだろ」
白い寝巻きを着た男はAを睨みつける。五年生にいたそっくりな二人のうちの片方だろうが、どちらかまではわからない。
わかったところでどうということはないのだが。
「先生方の様子が可笑しかった。伊作先輩もな。お前は今日保健室にいたんだろう？」
貴女「話が早いな。さすがだ」
「お世辞はいらない。その怪我でよく生きているものだ。他の天女たちはすぐに死んだぞ」
Aは立ち上がった。
ギィ、と不気味に床が軋み、月明かりにぼんやりと照らされた少女の姿がそこにある。
足元がおぼつかない様子で、ゆら、と揺らいだ彼女は、包帯だらけの顔の隙間から彼を見る。
どろりと濁った眼。
ひゅ、と喉がなった。
人間のする眼じゃない、と咄嗟に思った。
貴女「試してみる？」
「は？」
貴女「
先ほどまで必要以上に喋る様子のなかった彼女が、突然饒舌に話し始めたのをみて、彼は後ずさる。
貴女「ほら、チャンスだよ。抵抗しないから」
「お前……なんのつもりだ」
貴女「何のつもり？君達があまりにもしつこいからチャンスをあげようと思ってるだけだよ。親切でしょ」
とん、と自分の胸あたりを指さす。
貴女「……ここ、刺してみたら？君はヒーローだね」
笑っていた。
光の一切ない目で、口角を吊り上げて、ニヤリと笑う姿は、ひどく不気味で恐ろしかった。
思わず後ずさる。彼女は動かない。
貴女「………………なんのために」
彼女はぽつりと呟いた。
.
.
貴女「私も……あの子も、なんのために」
彼女がそう言い始めたのを見て、彼はついにその場をさった。これ以上こんな不気味な女とは一緒にいたくない。それだけだった。
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柑橘 - この作品が一番好きなんです！いつか最新される日を願っています…！ (3月13日 15時) (
レス) id: 9eaae6032f (このIDを非表示/違反報告)
もち米マン(プロフ) - 更新がありますように…！(*´･ω･) (6月11日 3時) (レス) @page26 id: 483e70a4e0 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん - 更新待機中(*・∀・)つ (5月24日 21時) (レス) @page26 id: 407aeb7a76 (このIDを非表示/違反報告)
光陰矢のごとし(プロフ) - 初めまして。コメント失礼します。個人的に天女ものが大好きでこの作品を読ませていただきましたが、とても読み応えがあって、続きが気になります笑これからも更新頑張ってください！！ (2023年1月2日 22時) (レス) @page26 id: 04bb5063ad (このIDを非表示/違反報告)
にょきにょき(プロフ) - コメント失礼します。3回ほど読み返しましたが設定から内容ストーリーも新鮮で斬新でとても好きです。下級生、くのたまちゃん達が好きなので読んでいてとても嬉しい？わくわくしております！主人公ちゃんには幸せになって欲しいと思いましたね← 更新応援しております！ (2022年9月25日 9時) (レス) id: 7282b40af5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅葉夜月 | 作成日時：2022年1月7日 1時
